僕は教室に居る。

君も教室に居る。


君は机に腰掛けて僕に強い眼差しを送る。
君の大きな丸い瞳に吸い込まれそうになる。


だから君を離さない。

ずっと────






「不二〜まだ終わんないの〜?俺、疲れた〜」



いい加減身動きが取れないことに苛立ちを覚えた僕の恋人が頬を膨らませて怒っていた。
なんて可愛いんだろう…。

今すぐにでも抱きしめたい────






僕は英二の顔を描写していた。
特に絵が上手いわけでもないのに何故か僕は英二を描いている。

色鉛筆が紙に擦れる度に…サッサッといい音が立つ。





「英二…やっぱり可愛いや」
「な、なんだよ不二〜!いきなり変なこと言うなよぉーっ」



変なことなんて言ってない。
全ては事実だから。

これは単に惚気話をしているわけじゃないんだ。
僕の…英二に対する真剣な気持ち。


嘘なんて交じり合わない…誠実な答え。




「…よしっ出来た。ほら英二、描いてみたんだけど…」
「おぉ〜すごーい!!俺だー!不二ってなんでも出来ちゃうところが腹立つんだよなぁ〜!」
「僕に腹を立てているの?」
「ううん、羨ましいんだよね〜。いいなぁ〜って」





英二はすごく喜んだ。
僕としても嬉しかった。

僕は英二が喜んでくれるだけで幸せ。
それ以上なんて求めたりはしないよ。




「ね、不二。今度は俺の大五郎を描いてよ!」

「いいよ、英二が描いて欲しいもの…皆描いてあげる」




お気に入りの色鉛筆を右手で回しながら僕は言った。
この色鉛筆は深い思い出がある。



僕の本来来るべきである、誕生日。
だけど僕の誕生日は閏年だから今回はない。


そんな僕にくれたもの。
それは英二からの誕生日プレゼント。



色鉛筆。






「これすごい種類あるじゃん?不二にいっぱい使ってほしいんだよね〜☆」




おそらく家族以外でくれた初めての誕生日プレゼント。

あんまり嬉しすぎて思わず僕は心がウキウキしていた。





「ねぇ不二!」
「なに?英二」
「あのさ…俺達、ずっと一緒だよね」
「…うん」






英二が僕の腕にしがみつく。
その姿がなんとも愛おしくて…
ついつい見惚れてしまう────




だから僕にもっと英二を見せて…
英二のありのままの姿を…






「今度は英二を描いてあげる」