「英二、何食べてるの?」
不二が俺の食べてるものに興味を持ったらしい。
俺は3時のおやつ、ということでサラダ味の小さなせんべいを食べていた。
実はこの商品には俺達の知ってる奴がキャラクターとして描かれているんだ。
「あ!越前が描かれてる!何これ、英二!?何処で売ってるの、これ?!」
「ん〜青い店にあるらしいよ?俺は大石に買ってきてもらったんだけどさ」
「(大石に買ってきてもらったって…大石はパシりにされてるのか?)…そ、そう。よかったね…でもなんで越前が?」
「さぁ?わかんね、期待の新星ってことで注目されてるからなぁ、あいつは。こういう商品が売れるって業者も思ってるんじゃない?それにしても200円だったらけっこう安いよねー。美味しいし」
「え!高いよ!せんべいでしょ?しかもこれ一袋でしょ?高い高い!(大体後輩がキャラクター起用されてる商品を堂々と買って食べる英二って…まさか英二…越前が好きになったんじゃ…!?)ダメダメ!せんべいは没収!」
「え!なんで!?」
「ダメなものはダメなの!越前のグッズなんて買わないでよ…」
「ふ…不二…。ごめんね…」
「…いいよ」
俺は開封したせんべいの袋を閉じると後ろから誰かがやってくる。
来たのは…噂をすれば影。
おチビだった。
「おチビ!」
「不二先輩、英二先輩のおやつ没収しちゃうんですか?英二先輩が可哀想っすね」
「キミには関係のないことだよ…」
「あっそ…別にいいけど。でも英二先輩食べてくれたんですよね。ありがとうございます。どうでした?」
「んにゃ!超がつくほど美味しかったよん!あ、でも俺残金少なくて、あとべーのお菓子の方買えなかったんだよな〜…エスプレッソ味とか気になるよな〜」
「ですよね。そう思って俺、今日持ってきたんすよ。業者の人が“お友達にどうぞ”ってね。英二先輩にだけ特別あげます」
「ちょ…待っ…」
「わぁい♪おチビ優し〜!ありがとー!」
「俺の家にまだ段ボール5箱もあるんで今から家に来ません?一人じゃ絶対食べきれないんで」
「ホントー!?」
俺は多分目を輝かせてたと思う。
だって新商品とかのお菓子って見逃せないし、やっぱり食べてみたいもん。
だけど…俺はそこまで単純じゃない。
もちろん今、不二がどんな気持ちで俺とおチビの会話を聞いているのかはわかっている。
ほらみろ、苦しそうに、胸を押さえながら前髪で目元を隠して下に俯いている。
だから俺はおチビにこう言うわけ。
「うーん…でもいいや!俺これから不二と遊ぶんだ!だからまた今度ねー」
「えい…じ?」
「あっ、待って…英二先輩…!今度っていつ…」
「今度は今度だよーん!」
「英二…僕に気を遣わなくてもよかったんだよ?越前のとこにいたかったら…行っても…いいんだよ。…食べに行きたいなら行っても―――」
「お前なー、どこまで俺が食い意地張ってると思うわけ?お菓子は確かに美味しいけど、不二の方がいいに決まってんじゃん!」
「ホント…?僕でいいの?」
「当たり前でしょ!菊丸英二様の一番の好物はプリプリエビフライでも、ふわふわオムレツでも、シャリシャリかき氷でもありません!不二が大好物なの!!…今の二度と言わないからな///」
「英二…!」
俺は触れるだけのキスをした。
うーん、我ながらちょっと恥ずかしい台詞だったかもしんない。
でも思いが伝わればいいんだもんね!
…その頃のおチビは―――
「あ、立海の…風船ガムの人」
「なっ!お前人の名前くらいちゃんと覚えろよ!…俺は丸井ブン太ってちゃんとした名前があるんだよ!」
「あのさ、アンタが好きそうなものが家にたくさんあるんだよね…食べに来てくんない?」
「おっ、食い物か?じゃあお邪魔するぜぃ」
