春はぽかぽかで気持ちがいい〜。
猫になったつもりで窓から外を見れば眩しい太陽が俺を照らす。
そしてもう一度ふかふかのお布団に戻って二度寝が…
「また寝るの英二」
低い声で囁かれてドキッとした。
ドアに立っていたのは俺の夫の不二。
エプロンをつけて怖〜い顔してる。
「にゃはは…もう起きるよ〜…でも!なかなか起きれないのはお前のせいだかん
な!」
「へぇ…人のせいにするんだ」
「だ、だって…激しくしちゃうから…」
「そうしてって言ったヤラシイ子は何処の誰だっけ?」
ひぃ〜っ!
怖いよぉ〜!
フライパン持ったままこっち来ないで〜!!
「英二のために僕は朝食作ってるんだけどなぁ…文句言われるとは思わなかった
な…」
「ご、ごめん…俺のせいだよね」
「わかればよろしい」
ふぅ…危なかった。
確かに今日は俺が当番だったしやってもらったんだから感謝しなきゃだよね。
服を着替えてリビングに行く。
美味しそうなふわふわのオムレツが出来上がっていた。
いい香り〜!
「わ〜い!不二ありがと〜大好き〜!!」
「ちょ…まだ調理中だよ英二!僕包丁持ってるんだから抱きつかないで!!」
あ、ごめん。
嬉しすぎて見えてなかった…
危なかった…えへへ…。
俺達は学校を卒業して社会人となった。
プロテニスプレーヤーになることだって何度か考えた。
それでも俺は不二と離れるのが嫌で、不二も俺と離れるのが嫌だって言ってくれ
て。
今ではこうして同棲生活をしている。
だから毎日が幸せすぎて嬉しいんだ。
「はい、できたよ。…どうしたのニヤニヤしちゃって」
「え?ニヤニヤしてた?!…不二と一緒にいられることが嬉しいからだよー!」
俺が不二に言うと目の前が暗くなる。
不二の胸だった。
抱きしめられて呼吸がしづらくなった。
「…そんな事言われたらお礼をしなきゃだなぁ」
「お礼?」
不二は中学から成長して俺より背が高くなった。
なんて言っても俺と大して変わらないけどね!
だって今俺座ってるし…って不二ってば何して…!!
「ちょっ…!不二!!」
「え?お礼に一回僕をあげようと…」
「朝から盛るな〜!!」
俺の下着に入れてる不二の手を払い除けて身を守るようにする。
イキナリで驚いたからちょっと涙目になった。
「英二…!ごめん、怖がらせるつもりは…!」
「夜!」
「え?」
「…夜がイイ」
俺の頭を撫でた不二。
ちょっとした演技ってのは不二にはナイショ。
あ、でも驚いたのは本当だけどね。
「英二、詫びにいいもの見せてあげるよ」
「いいもの?え〜なになに教えて〜」
「ご飯食べてからね、ほら急がないと遅れちゃうよ」
合掌していただきます!
不二の美味しい朝食を食べて…でも不二の見せたいものってなんだろ?
気になって気になってしかたなかった。
「ごちそうさま!不二〜美味しいかったよ」
「本当?よかったよ…今晩は英二作るんだからね」
「うん!オッケー」
「デザートは英二ね」
「え」
嫌な予感が…でも夜がいいって自分でさっき宣言しちゃったからなー…。
しょうがないや…。
玄関を出て同じ会社へ。
実は同僚でもあったりする。
だから通る道も同じなんだけど今日は違う道を通ってる。
何があるのか…不二が止まった所は───
一面のタンポポ。
「ダンデライオンとも言うんだよ、知ってた?」
「へー!そうなんだ…すごいキレー…」
いいものってタンポポだったんだ!
春をまた見つけられた…!
「サンキュー!不二!」
「ね?いいものだったでしょ…あ!もうこんな時間!早くしないと怒られ
ちゃう!」
「え〜大変!」
俺達は走って会社へ。
今度ケータイのカメラで撮ってあのタンポポ待受にしよっと!
