次の祝日は二人だけでデートをすることになった。
デートの場所は意見がバラバラになっちゃってなかなか決まらなかったけど、最 終的にじゃんけんで決めて俺の意見の遊園地になった。







「やった〜!わぁいわぁい!俺、やっぱり楽しいとこが好きだもん!」

「う〜ん…僕は大人の遊園地の方が二人っきりになれていいんだけどな…」









不二の意見なんて聞かないんだから!
そりゃあ…俺だって嫌なわけじゃないけどさ…
午前中からそんなとこ行ってらんないよ!






























───祝日

混んでから行くのは嫌だったから早めに行くことにした。
後からベンチで昼食を取れるようにと手作りのお弁当を持っていく。
頑張って早起きしたからけっこう手の込んだお弁当になった。
味見もしたしきっと大丈夫!
喜んでくれるといいなぁ…。















「うわ…やっぱり人多いね…」

「うん、でも早めに来てよかったじゃん!並ぼっ」







行列だったけど待ち時間は思ったよりかからなかった。
手を繋いで中へと入っていく。
人目を気にして最初は拒んだけど周りのことを気にしちゃいけない。
せっかくのデートだもん、恋人らしいことしなきゃダメだよね。







「最初何乗る?」

「あれ乗りた〜い!」







俺が指差したのはこの遊園地で一番人気があるアトラクションのジェットコース ター!
いきなり乗るの?って言われたけど最初から飛ばしたってい〜じゃん?

既に並んでたけど時間が経てばもっと混むこと間違いなし、だもん。










俺の判断は間違っていなかった。
自分が乗る頃後ろはさらに行列ができていた。
あの人混みにいたら、と思うと眩暈がする。









激しい物音とスピードで一気に駆け上がり、あっという間に終わってしまうけれ ど恐怖感と絶望感がたまらない。

なんといっても不二と並んでキャーと叫んだのはすごく嬉しかった。









次は何に乗ろうか、なんて話をしていると広場らしき所で動物の形をしたバルー ンを持った子供達が走ってきた。
そこにいたのは道化を職業とする人=ピエロがいた。
あまり最近は見かけないと思っていたけれど、細長いバルーンを上手く捻り可愛 い犬やうさぎを作っているらしい。
その手付きはまさに職人技だ。


いい機会だから俺もリクエストしちゃおうかなぁ?







「ちょ…英二、あれもらってんの子供だけだよ?やめようよ、ただでさえ僕達大 人っぽく見られるんだから」

「え〜?別にいいじゃんか。大人がもらったって変じゃないよーって大体、俺達中学生 だしっ」









俺は不二の話を流してピエロの所へと向かう。
人の良さそうな顔をしたピエロは若干困った顔をしていた。
近くの看板を見れば『子供に限定プレゼント!』と書かれていた。
周りにいた子供達は俺の顔を見てポカンと口を開けている。
まさに空気が読めないとはこのことなんだと知った。
恥ずかしくて不二の所へと戻った。

不二が笑いをこらえているのがわかる。







「だから言ったでしょ?やめた方がいいって」

「う゛…だって…欲しかったんだもん。猫の形のやつ持ってる子いたから…それ 持ってシール撮りたかったんだもん」

「英二ってば子供みたいなこと言うんだね…クスッ」







どうせ俺のこと馬鹿にしてんだろっ…いいよ別に…俺どうせ変だしっ…







半泣きでいるとこっちに向かってトタトタと歩いてきた女の子がいた。
女の子は黄色のバルーンを持って俺に差し出した。







「ねこさんあげる」

「え…いいの?」

「何言ってるの英二、返してあげた方がいいよ」

「くまさんもってるからあげる」







俺ってばどこまで幼稚なんだろう。
結局受け取ってしまった。
後からものすごい罪悪感にかられた。
馬鹿だよ…中学生のくせしてこんなことして…。







「ねこさん…って言ってたけどこれはキリンみたいだね…ま、あの子がいいって 言ったんだからいいんじゃない?」

「うーん…そうかな…」

「子供っぽい所も僕は好きだけどね」

「ホント?!…えへへ嬉しい…」









一通り回ってから最後にシールをとった。
そのときにさっきの女の子に会ったから、土産に買ったクッキーをあげた。
女の子はすごく喜んでいた。








「英二…今度はもうちょっと大人になろうね」

「…はぁ〜い」