どんなに好きと思っても本気になってもらうのは難しい。
俺のライバルは沢山いるし、どうやっても叶いっこないんだ。
俺は女じゃないし…不二はただの遊びで俺といてくれるだけ。
今日はオモチャで何をしようか。
どうやって遊ぼうか。
不二はこんな話ばっかで俺の気持ちには気付いてくれない…
こんな関係になったのは今から2週間前の事。
不二から突然呼び出された。
俺はついに密かに想っていた気持ちがバレてしまったんだと慌てふためいた。
これで不二と友達としても一緒にいられなくなるかもしれないと思ったから。
だけど予想は180度違っていた。
“付き合って”と言われたんだ!
まさかこんなシチュエーションが待ち構えていたなんて思わなかったから俺は喜んで頷いた。
しかし俺が笑顔でいられたのはここまでで、次の瞬間俺はすぐさま床に押し倒されていた。
何が起こったのかわからなくて不安感でいっぱいになると不二はにっこり笑って言った。
“今日から英二は僕のオモチャだよ”と。
身体中引き裂かれるような痛みからやっと開放された俺は震えながら服を着ると“また遊んでね”と微笑みながら不二は言った。
身体の奥は不二に何度も突かれて痛くて感覚が麻痺していたから、現実がわからなくなっていて俺はただ頷くしか出来なかった。
こうして身体だけを求められる関係が続いていった。
後から噂を聞いたら他の複数の女子にも手を出してるって聞いて悲しくなった。
俺だけじゃないんだ。
不二は誰とも本気で付き合わないのかな。
それとも女子の中に本命がいるのかもしれない。
そう考えたら無性に涙が流れてくる。
でも本気じゃなくても、たとえ遊びであっても、一緒にいられるならいいのかなって思った。
だって俺にはそれしか出来ないから。
ある日不二からメールが来た。
普段なら誘いのメールで場所と時間が書いてあるのに、今日は違った。
“もうこの関係をやめたい”と書いてあったのだ。
俺は涙が止まらなくなった。
メールの文字が涙で見えなくなる。
嫌だ…せっかく不二と一緒にいられる手段を見つけたのに…。
不二がいなくなるなんて…やっぱり本命の子一人に絞って付き合うつもりなんだ…
俺じゃ…ダメなの…?
その時、後ろから誰かが歩いてくる音がする。
そいつは俺の名前を呼んだ。
まさに今メールを送った主、不二だった。
「英二…」
「なんでだよ…」
「えっ…?」
「どうして…俺じゃダメなんだよ…!」
「英二…?」
「俺の何がダメだった!?女じゃないから!?可愛くないから!?もっと女みたいにイイ声出せば不二はこんなこと言わなかった!?」
「英二!君は勘違いしてるよ!そうじゃないっ!!」
「何が勘違いなんだよ!!俺の他にも沢山女の子と付き合ってて、いっぱいヤりまくって、新しいオモチャがあれば次々遊んで、古くなったら棄てるんだろっ!!!そうだよな、俺なんてオモチャ箱に入った汚いガラクタだもんなっ!!!!!!」
ついに爆発して言ってしまった。
ずっと長い間秘めていた不二に対する思い。
言いたくて言いたくて仕方なかったけどずっと我慢していた。
だけど言ってしまった。
もうおしまい。
ガラクタは自然発火して灰になっておしまいなんだ。
俺が立ち去ろうとすると不二に腕を掴まれる。
振り払おうと思ったけれど強引に掴まれて、痛くて振りほどけなかった。
悲しくて泣きながら不二の無理矢理なキスを受け入れる。
俺…バカだ。
こんなときでも不二が好きと思ってしまっている自分がいて嘲笑する。
「英二…君はだいぶ誤解しているよ。まず僕が付き合っているのは英二だけであって、女子なんか話すらしないよ。…噂が独り歩きしているのは僕も知っていたけど、おそらく話を広めたのは僕と英二の関係を見た人が勝手に言いふらしただけだ」
「う…そ…」
「君をオモチャと言ったのはその方が君が萎縮しないで付き合ってくれると思ったからだよ…こんな方法しか思い付かなかった僕が悪い」
不二はつらそうな声で俺に話してくれた。
俺だけがつらい思いをしているんだとばかり思っていたけれど、不二もつらい思いをしていたんだ。
そんな不二の気持ちにも気付いてあげないで俺は怒鳴り散らしたんだ…。
俺…最低じゃん…!
不二に…なんて事を…!!
「不二…!ごめんね…噂ばかり信じて…不二の事信じなかった…」
「いいんだ…いいんだよ英二…。だからね、今度はちゃんと付き合いたいんだ。メールでこの関係をやめようって言ったのはそういう事」
「不二…!よかった…。ごめんね…本当にごめんね…」
俺はひたすら謝った。
でもこれで不二はずっと俺の側にいてくれる。
それが一番嬉しかった。
