※ギャグ、不二がおバカさんでも大丈夫な方のみどうぞ





英二が言う恋とは、ドラマのような恋。だそうだ。
僕と付き合っていながらこのような不満をよく漏らす。
僕じゃ不満だって?
冗談じゃない!

「だって不二ってば俺と二人きりだとすぐヤりたいってばっか言うんだもん!サイテー!!」
「そんな下品なこと僕は言わないよ!英二、周囲に誤解を招くような物言いはあまりよろしくないね…」
「…って言ってお仕置きとか言うじゃん!お前の思考が下品なの!」





「それで…不二先輩はあんなにテンション落ちてるんすか」
「俺は知らにゃい!間違ったことは言ってないもん!勝手に憂鬱にでもなってれば!」
「珍しく英二先輩機嫌が悪いっすね…」
「おチビはど〜思う!?やっぱ不二おかしいでしょ!」

グサッ

「不二なんて頭が下半身でできてるんだよ!!」

グサグサッ

「不二なんてもう知らない!!」

英二からの鋭い攻撃を受けた僕。
もはや部活中だからとか僕がいるからとか関係なしに暴言を吐きまくる英二。
気分が悪くなり、僕は口から赤い液体を吐き出した。
その途端、僕の近くにいた1年トリオが悲鳴を上げた。

「ぎゃあぁぁぁあ!!!!?不二先輩!!!!ふ、不二先輩が吐血したぁーっ!!!!!!?」
「お、おい!不二!大丈夫か!?」

副部長として部員の管理も怠らない大石は真っ先に僕の所へ駆け寄る。
赤い液体は止まらず倒れた僕の顔、しまいには体にまで広がる。
これぞまさしく…月曜サスペンス風劇場!(※BGM付き)
話の展開はこうだ。
愛し合うカップル、不二と英二がいた。
しかしあることをきっかけに二人は喧嘩をしてしまう。
仲直りをしようと思うが二人はなかなか話を切り出さない。
そこで不二は血糊を口に含み、あたかもストレスで吐血したように見せ、英二の気を引くわけだ。
英二は不二が病気なのかもしれないと思い、涙をはらはらと流しながら安否を確認する。
その時のセリフはこうだ。

『ごめん不二…俺…不二に言い過ぎた…不二がいなきゃ俺は生きていけないっていうのに…』
『えい…じ…』
『お願い!死なないで…俺…不二に言われたこと…なんでもやるから…!ちゃんと不二の言うこと聞くから…だから死なないで!!』

…というサスペンス的であるが実はドラマチックな恋の劇場。
僕が考えた素晴らしい最高傑作の台本。
きっと英二が求めていたのはこういう展開だったはずだ。
僕は英二が側に寄るまで仕込んでおいた血糊をひたすら口から流していた。
部の皆が心配する中、英二は体を震わせながら僕に近寄ってきた。
あぁ…あまりに衝撃的すぎて体が震えちゃったんだね。
脅かしてごめんね。
でもこれは血糊で本物じゃないし、僕はなんともないから。
さぁ英二…僕に近寄って泣いてみて。
僕を触って、安否を確かめるべく、すがりついて欲しい。
と考えていた矢先、僕の腹に蹴りを加えたのは…紛れもなく英二だった。
腹に蹴りが見事に入り、僕は血糊をガフッとさらに吐き出した。
ちなみにこれは演技ではない。

「おい…!?英二?!不二が苦しんでるのに一体なんてことを!」
「バカ…大石。これ血糊だし」
「なんだって!?」
「……」
「不二はね〜、いっつもこんなくだらない演技ばっかりしてるんだよー。だから今さら驚かないっての!」

なぁんだ、と言わんばかりに僕から人が遠ざかっていく。
英二…僕はドラマのような恋をさせてあげようと思って頑張っていたのに。
これじゃあ…僕はただのおバカさん扱いされるじゃないか!
英二…君に喜んで貰おうと思ってやった結果がこれじゃあ浮かばれないよ、僕。

「…英二」
「……」
「嫌いかい?こういうシチュエーションは」
「嫌いじゃないけど…」
「けど?」
「お前は周囲から思われてるような天才じゃないってことはよ〜くわかった。お前って人前でもそういうこと平気でやってのけるのな。誰よりもバカなんだにゃー」
「なっ…?!バカって…!僕が英二のためにやっていたことなんだよ!?それを…」
「おバカさんには付き合いきれないっ!ばかばかばかー!」

こうして僕の企画、月曜サスペンス風劇場は幕を閉じるのだった。
英二に僕のカッコいいところを全くもって見せることができなくて残念すぎる。
次回は何曜日サスペンス風劇場にするべきか悩むところだ。