「不二〜!花火やろ〜!!」
俺は不二に去年の残っていた花火を見せた。
不二は目を真ん丸にして花火を見てる。
「どうしたの…それ」
「へへーん!去年の残りものだよんっ♪今からやりに行こうぜ!」
「…何を?」
「何をって見ればわかるだろー?!花火だよっ!は・な・びっ」
やるって決めたらすぐ実行!
ってわけで不二の腕を引っ張って公園に向かう。
今日は部活もないし寄り道したっていいじゃん?
「ねぇ英二。花火やるっていうけどまだ夕方だよ?」
「蛇花火があるんだ〜」
不二に蛇花火を渡す。
俺はあんまりこの花火好きじゃないけど、夜になったら見えないからね。
「…火をつけるね」
不二がライターで火をつけた。
ライターは兄ちゃんから借りてきたやつなんだけど…不二とライターって…なん
かカッコいい。
不二を見つめてたら俺の視線に気付いたみたい。
「僕の顔に何かついてる?」
「ううん!…不二ってやっぱカッコいいなって思っちゃった」
「お世辞言っても何も出ないよ?フフッ…英二はすごく可愛いよ」
照れながらもそんなことないよって言った。
地面では黒い物体がくねくねしながら大きくなっていく。
「英二、これって楽しいかな」
「…あんまし…。いらないって言ったのに兄ちゃんか姉ちゃんが入れたんだと思
う」
「僕には違うものに見えるよ」
違うもの…そこは深く聞かないことにした。
なんとなく俺も不二が何を言いたいのかわかったから。
地味な花火を終えると段々空も薄暗くなってきた。
花火をやるにはまだ明るいけれど。
「英二、ジュース飲もうか」
「うん、飲みたいな不二」
上目使いして不二を見たけどおごってはくれないらしい。
ちぇっ…
不二は自動販売機へ向かった。
気のせいかもしんないけど不二はあんまり笑っていない気がする。
花火…嫌いだったかな…。
「お待たせ…英二?暗い顔してどうしたの」
「なんでもないよ」
不二は俺を抱き締めた。
温もりが伝わる。
暖かい…
「英二…僕にはなんでも言って」
「うん…。不二がね、花火ヤだったかなって。俺いつも自分のことばっか考えて
たから…」
「そんなこと…ないよ、英二。花火楽しいよ…いや、花火でもなんでも…英二が
一緒なら僕は嬉しい」
さらに力が入って抱き締めた不二。
さらさらの不二の髪がほっぺに当たる。
くすぐったい。
「花火はこれからだよ。いい具合いに暗くなってきたし…」
「本当に?だって俺が花火持ってて、やろうって言ったときの不二…そっけなか
った…」
「そっけない?僕は何をやるか本当にわからなかったんだよ…ヤるなんて言うか
らてっきり…」
「え!?………不二のエッチ!!!」
もう!恥ずかしいこと簡単に言わないでよ!
花火持ってたんだからわからないわけないのに…!
なんだか身体が変な感じになっちゃう。
「花火終わったら僕の家に行こうよ…泊まってもいいし」
「え?!は、恥ずかしいよ!!!」
なんて言ったけど本心は嬉しい。
不二ともっと一緒にいられるから。
しけった花火でも火がつけば眩しい色になりながら燃えていく。
キレイな花火を見ながら不二との寄り道はすごく楽しかった。
最後のシメとなる線香花火を終えて、俺は不二と手を繋いで家に向かう。
「不二、また花火しようね!」
「うん!やろうね」
不二が言うと“やろうね”って言葉もいやらしく聞こえる。
あー…俺が変なコト考えすぎなんだよな…。
「英二?顔赤いよ…またヤらしいことの妄想中?」
「ばっ!ばかなこと言うなよぉ!それは不二の方だろ〜?!」
はしゃいで帰ったのがすごく楽しかった。
不二…これからも一緒にいようね!
