なんだか眠くなくなって…目が覚めたら布団には俺以外の誰かがいて。
ふとそちらを見ると不二が一緒になって横になっていた。
なんだろう…俺達はなんで裸なのかな。
そういえば昨日は一緒に二人で酒でも飲もうってことになって…飲み屋に行って 疲れたからもう寝るってなって…不二の家が近いから不二の家に───

でもその後の記憶がなくて…どうしたんだっけ…酔ってたから思い出せない…。







「…おはよ、英二」

「おはよ…」







わからない…俺達は何してたのかな…

身体中が痛くて起きるのも苦痛だった。
朝になったんだし起きなきゃなんだけど…どうしよう。








「気持ちよかったね、昨日」

「え?!」

「英二は…嫌だった?僕は…楽しかったけど」







楽しかったって…どういうことなんだよ…?!
まさか俺…不二としちゃったの…?!







「早く着替えないと間に合わないよ」

「え…でも…!」

「何?そんなに体痛い?」

「身体なんて痛いに決まってんじゃんか!お、俺…初めてだったし」

「これからも続ければ慣れるよ」









続ければ慣れる?!
なんてことを言うんだよ!!
ってことは俺とまたヤるってことでしょ?!
か、勘弁してよ!!!







「ふ、不二のヘンタイ!俺そんなに身体もたないよッ!」

「テニスであんなにアクロバットやってた人が何を言うのさ。こんなの英二にと っては朝飯前でしょ?」







不二は俺をなんだと思ってんだろ…アクロバットが得意ならヤりまくっても平気 だって言いたいんだ…
そうなんだ…
俺…そんなヤらしい人間じゃないのに…!!







「不二なんか大嫌い!!!」

「え?!なんで?!英二?ちょ…英二ってば!待ってよ!!」







俺は家を飛び出した。
だってひどいじゃんか…俺のこと侮辱しちゃってさ…知らないのに…覚えてない のに!

会社には連絡して休むことにした。
こんなので有休使ったらあっという間になくなっちゃうよね。
もう…不二なんか…不二なんか…







「英二!!!」

「不二…(フンッ!知らないフリしちゃえ!!)」







来てくれた不二を無視して公園にあったベンチに座った。







「英二!塗りたてだよ、ペンキ!!」

「え?!…うわっ…最悪…」







俺が座ったベンチは白いペンキを塗ったばかりだったらしい。
やってしまったと思いつつ、誰かのせいにしたくて不二にやつ当たりした。







「なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないわけ?!こうなったのも不二のせい だよ!」







自分で言ってて意味不明だった。
ペンキなんて不二が悪いわけじゃないことぐらいわかってる。
こんな子供じみたやり方でしか訴えられない自分がさらに嫌になる。
俺が馬鹿じゃん。







「ごめ…言い過ぎた」

「はぁ…まったく英二ってば勘違いしてない?」

「え…?」

「昨日僕が英二にしたこと…覚えてないんだね」







俺は頷いた。
不二はやれやれ、といった表情で話した。







「英二にしてあげたのはマッサージなんだけど」







俺は不二の言葉が頭の中でリフレインした。
頭でその言葉を理解したとき、顔から火を吹く感じがした。
じゃあじゃあ…もしかして俺の勘違いって…







「英二の様子が変だったからさ、多分勘違いしてるなぁって思ってね」

「そ、そうだったんだ…うわ…俺サイテーじゃん…ごめん…不二…」

「いいよ、気にしなくて。誤解が解けてよかった」







一つだけのことにこだわったせいですれちがいが起きちゃったんだ。
相手の話はちゃんと最後まで聞かなきゃだよね。

次は気を付けないと。









「あ、でも今度は本当にヤろうよ。それとも…やっぱり嫌かな?」

「う…ううん!嫌なんかじゃないよ!今度…ね?」







俺は不二と仲直りした。
変な勘違いはしちゃ駄目だよね!