付き合って間もない頃、俺には不安があった。
不二は先を急いでいると思った。
お互い付き合うのは初めてで、どう接していけばわかんないから友達の話なんか を聞いたりして参考にしてた。

姉ちゃんからはゆっくりでいいんだ、と言われたけど…
兄ちゃんには相手が欲しがってるなら早くしてやった方がいい、と言われた。

正直言うと俺は怖かった。
身体を繋ぐってどうなっちゃうんだろうって思うし、痛いとか気持ちいいとか矛 盾してるし…
俺は気持ちいいことは好きだけど…初めてなことだから怖い。


でも不二はしたがってる。
それは付き合っていけば当たり前なこと。
自然なこと。
俺だっていつかは不二に抱いてもらいたい。


でも…不二が俺の中に入ってくると考えると身体が震え出す。







「英二、今日家においでよ」







不二からのお誘い。
俺は外泊の許可がなかなか下りないと言った。
本当はそんなことはなかった。
いつでも外泊なんてOKだ。
家族はそんな厳しいわけじゃない。
そう断るのも…まだ俺が決心していないせいだ。
まだ早い気がする。
だって俺達は中学生。
そういうのって…まだしない方がいいんじゃない?







「そう…家近いんだし悪くないと思うんだけどね」

「ごめん…」

「いいよ、英二は悪くないし。御家族だって英二を心配してるんだから」







嘘を言ったことに後悔した。
そこまでして自分を守りたい?
俺ってサイテーなことしてるじゃん。
不二のお願いも聞いてあげないでさ。

大丈夫、大丈夫だよ。
そう自分に言い聞かせて俺は前言撤回した。







「あ、あのさ!やっぱ行く!」

「え?大丈夫なの?」

「わ、忘れてた…昨日ついに許可とれてたんだった」







じゃあ今日に決まりだね、と不二は嬉しそうに言った。
いいんだ…早い方が。
不二だって溜ってるはずだし。







授業を終え、部活を終えた不二と俺は二人で手を繋ぎながら帰った。
これから待ち受けるのは…天国であって欲しい。

不二が家の鍵を開けると中は静まりかえっていた。
不二の家は誰もいないみたいだ。
やっぱり今日俺を連れてきたのもその目的を達成したいからなんだ。

ドキドキしてきた…








「2階上がってて」

「うん、わかった!」







ゆっくりとした足取りで階段を上る。
俺は何をどうすればいいんだろう。
今俺にある知識と言えば、ドラマなどで出てくるそういうシーンしかない。

受け身の人、つまり女の人が俺に当てはまるわけで…
考えたら下半身に違和感を覚えた。


俺のバカ。

今からこんなでどうするんだよ…







「お待たせ、英二…あれ、どうしたの?」







俺がおかしな行動をとっているのは不二にバレていた。
ひたすら不二に見えないように手で隠していたけど、俺がどうしたのかすぐにわ かったみたいだ。
きっと俺はヘンタイだと思われた。
まだ何も始めてないのに勃っちゃってたんだから…







「ふふっ…待ちきれなかったの?英二。可愛いね…」

「ち、ちが…これは…」

「違う?そこの膨らんだトコ、一人で慰めてたみたいにしか見えなかったけど」







それを言われて俺は赤面した。
好きな人から“一人でヤってたんだろ”って言われただけで、顔の熱がこびりつ いたようにとれない。
恥ずかしくて俺は下着の中で少し射精してしまった。







「我慢できないなら僕に言ってくれればよかったのに」

「そ、そうじゃなくて…ひゃぁッ!!」







不二は持ってきたティーカップをテーブルに置くとすぐ俺を抱き締め、ベッドに 押し倒した。
視界が天井のみになると不二がフレームインした。
心なしか不二の頬は紅色だった。
ニコっと笑いながら不二は次々と俺の服を剥ぎ取った。
何が起きてるかわかんなかった。
下着を下ろされたときに不二に笑われた。







「やだなぁ英二、もう一人でイってたの?ずるいよ、自分ばっか」







無償に怖くなった。
不二が俺のやらかした所を手で拭い取ると俺の後ろに…
音を立てて中に入ってきた。
不二の指がこんなトコに…!

イヤ…イヤ…嫌ぁっ!!!







「えい…じ…」









不二は言葉を失った。
俺が拒んだ理由を探しているみたいだった。








「…合わせてよ」

「え…」

「歩調合わせてよぉ!!」







泣いてどうすんだよ、俺のバカ。
不二困ってるじゃん…。
気もないなら来るべきじゃなかったのに…
不二にキレて俺…最悪…







「ごめん…」

「や、やだ!謝んないで!悪いの俺だから!」

「そんなことないよ…英二がセックスを怖がってたのは知ってた。でも…僕が優 しくやれば大丈夫だなんて勝手に決めつけてた」

「不二…でも…!」







俺は言った。
抱かれたいって。
不二は俺が無理して言ってると思ったみたいだけど、これは本気。
怖いって思う気持ちは消えないけど…不二に抱かれたい。







「本当に…いいの?」

「うん…で、でも…やり方とかわかんないから…だから…」

「急がないよ。英二にちゃんと合わせるから。ごめんね、怖い思いさせて…もう 安心して。大丈夫だから…ね?」







俺はゆっくり頷いた。
俺の唇に不二のキスが落とされる。
いつもよりゆっくりでとろけそうなキス。
甘くて唇を離したくなかった。







「急かさないから…僕を信じて…」

「うん…」







首から胸にかけて沢山愛撫された。
自分の身体から熱い何かが漏れ出しているようだった。

ついに俺が怖がっていた場所に到達するとゆっくり指が入る。
異物感に耐えて、ぎゅっと目を閉じた。







「力入れちゃダメ、力は…抜いて」

「わかった……んっ…!」







痛い…でも頑張んなきゃ…
次第にそこが抜き入れしやすく感じるようになった。









「ちょっと痛いかもしれないけど…我慢するんだよ」

「うん…っ…あ!!」







今までにない威圧感が全身を襲う。
何…これっ…あっ…








「いたっ…あ…っ!…アァッ…」

「英二…僕の名前…呼んで!」

「ふ……!不二ぃッ!!!あぁッ…!!」







不二から熱いものが沢山俺に注がれた。
全て受け入れられなかったのか、シーツに流れ出て水溜まりのようになった。
俺の方も吹き出したように精液が出た。

今までにない快感だった。
俺は呼吸を整えるのが精一杯だった。


その後不二とどんな会話をしたのか記憶になかった。















「英二、おはよう」

「あ…おはよ…そっか。不二の家に泊まってたんだっけ」







恐ろしいほど記憶が飛んでて自分でも驚いた。
不二はいつものように俺に微笑んでた。







「身体…大丈夫だった?」

「うん、へーきだよ!」







俺は不二に抱きついた。
今まで避けてたことを謝った。
不二は理解してくれた。
もし不安があるなら僕が掻き消すと言ってくれた。







「ありがと」







俺は皺くちゃになったシャツを着て不二と学校に向かった。

不二となら…もう怖くないよ。