俺達は青春学園高等部に進学し、今年で三年になった。
二年でクラス替えがあったけど、中学のときみたいにまた不二と一緒になれたのが本当に嬉しかった。
三年での修学旅行では不二と一緒に行動できる。
班も同じになれたので心配いらずだった。
修学旅行の行き先は沖縄だった。
旅行というよりは学習だと感じた。
やはり沖縄というだけあって戦争についての歴史を学ぶというのが主体らしい。
俺的には、沖縄は食べ物が充実していると聞いたので歴史より食べ物に興味を引いていた。
そしたら不二に怒られた。
「歴史を学ぶのは大切なことだよ、英二。特産品もいいけど話もちゃんと聞かないと」
「わかってるよー!もう不二ってば真面目なんだから」
「つまんない男だと思った?」
「…ちょっと」
「じゃあ英二に一つ話してあげる。沖縄の砂浜に星の砂があるって…知ってる?」
なんとなく聞いたことがある。
でも実際には見たことがなくて。
もし本当に星の砂があるならすごいロマンチックだと思う。
でもそれより、不二と二人きりで砂浜にいる光景を想像したらなんだか恥ずかしくなってきた。
「英二…顔赤いけど大丈夫?もしかして…シたくなった?」
「はっ?!え…?!ち、違う違う!そんなんじゃなくて…!」
「いいよ…英二。このあと音楽室が空くはずだから…そしたら抱いてあげる」
なんだかんだ理由をつけて、結局毎日ヤってるんだけど…俺達ってしすぎなのかな…。
前、深夜のラジオを聞いていたときに、ゲスト出演した女医さんは、二日に一回くらいにした方がいいと言っていた。
医療の専門家が言うんだから事実なんだろうなと思いながらも、軽くその回数を上回る程ヤっているのはマズイかなぁ?
旅行に至っては何故かくじ引きしたはずなのに、部屋割りが不二と二人部屋なんだ。
まさか不二…くじに細工とかしてないよね…。
…と不安に思いながらも旅行まであと一週間となったわけだ。
一週間後…
ついに旅行は始まった。
行き先はいろいろ自分達の行きたいところへ行っていいことになってるけど、門限があったりして全てが自由になるわけじゃない。
時間を気にしながらの行動はあまり落ち着かなかったけど、予定していたより早く終わってしまった。
そしたら担任が、近くのビーチなら足に水を浸けてきてもいいぞ、って言ってくれたから不二と一緒にビーチに向かった。
「英二…こっちの海は綺麗だね。東京じゃ味わえない景色だ」
「うん…夕陽が海に溶けてていいね。…ねぇ不二、誰も見てないから抱き締めて…」
「英二はベッドまで我慢できないの?困ったな」
「ち、ちがーう!抱いてって意味じゃなくて!!」
「わかったわかった…これで満足かな?」
不二は後ろから俺に腕を回し、抱き締めてくれた。
ほのかに不二の香りがして気持ちが落ち着いた。
「そうだ…英二、例の話してた星の砂…探してみない?」
「うん…探したい」
俺と不二は砂浜に座って探した。
貝殻や珊瑚礁の棒みたいなのが落ちていて見つけるなり、俺は拾って手に握り締めた。
だけど肝心な星の砂は見つからない。
これらは皆ただの砂の形にしか見えないけど…もしかして顕微鏡とかで見ないと星の形に見えないだとか?
だとしたら…
「英二、疲れた?もしだったらもうやめにしよう。ちょうど貝殻とかの小物が入るビニール袋があるから…これに入れて」
「うーん…」
結局見つけられなかったみたいでなんとなく気落ちしてしまった俺。
でも不二は俺を再び抱き締めると空を見て、と言った。
見上げるとすでに夕焼け空から夜空に変わっており、星が輝いていた。
「英二…砂の星は見つけられなくても、空の星は見つけられたよ」
「ほんとだ…一番星…」
「沖縄は空も綺麗なんだね…。ねぇ、英二…でもね、海より空より綺麗だと思うのがあるんだ」
「なぁに?」
「それはね…」
「お〜!やっぱりいたさ〜!」
「久しぶりですね、青学。やはり高校でもあなた達は青学に進学していたとは…」
「な…!?比嘉中?!甲斐に平古場!木手まで…」
「比嘉高です。私達はもう中学生ではありませんからね。次間違えたら…ゴーヤ食わすよ」
中学のときに全国大会で試合した、あの比嘉中の奴らが比嘉高になっていた。
そっか、青学が来るなんて聞けば俺達がいるかもってのは予想できるのかぁ。
「(せっかく一番綺麗なのは英二だよって言おうとしたのに…!)」
「不二、またダブルスするさぁ!今度は真っ向勝負で!」
「あ…、あぁ…わかった、いいよ」
不二の笑顔がひきつっていた。
まだあの試合でスミレちゃんを狙われたこと…怒ってるのかな。
「お前ら何やってたさ?」
「あぁ…星の砂を探していたんだけどね。なかなか見つけられなくて」
「星の砂はそう簡単に見つけられないですよ。綺麗に星の形をしているものは数少ないのです。売店の土産コーナーに売ってますよ」
「それじゃロマンがないじゃんか〜」
「…ワガママな人達ですね。大体星の砂はなんだかわかっていますか?あれは珊瑚礁の死骸です。波に煽られ、削られて、形が星のようになるんですよ。知ってましたか?」
「それは知ってるけど…」
「(え!?俺知らなかった…)」
「一人知らなさそうにしてる奴がいるさ〜!ぷぷっ」
甲斐に言われて思わずドキリとしたけど、俺は知ったかを続けた。
結局星の砂を見つけるのは難しいってことで砂浜を散策するのをやめた。
星の砂は見つけられなくても楽しい思い出にはなったからね!
あっ!そういえば不二がさっき何か言いかけてたなぁ。
何なのか聞いてみよう。
「ねぇねぇ不二、さっき言いかけてたことってなぁに?」
「え!?えっと…あぁ、部屋に戻ったら言ってあげるよ」
「え〜?今言ってよ〜」
「ダーメ。まだ言わないよ」
気になって仕方ない。
なんだろう…
何を言いたかったのかなぁ。
そんなことを考えながら砂浜を裸足で踏みしめた。
