好き過ぎてこんなに胸が苦しくなるのは人生で初めてだった。
君のことを考えているだけで僕は幸せに浸ることができた。
僕がここまで生きてこれたのも、君がいてくれたおかげだ。
君がいなかったら僕は今頃この世になど存在していなかったに違いない。
君が生まれて来てくれて本当に良かった。
こうして君を視界の隅に捕らえることができるのも、運良く君の席の隣になれたから。
机をトントンと叩いた君の方を見れば、両手を顔の前で合わせて必死な表情をしている。
“消しゴムを貸して”
このお願いをしてくれるのも君が側にいてくれるから。
僕は緩やかな笑みを浮かべて消しゴムを君に渡す。
手を触るように渡したのはわざとだけど、きっと君は微塵も気がつかないだろう。
僕は消しゴムを渡した後もずっと君を見つめていた。
君はノートに書かれた文字を一生懸命になりながら、僕の貸した消しゴムで消している。
「あっ」と小声で君が言えば周囲のクラスメートは君の方を振り返り。
君は床に落としてしまった消しゴムを拾う。
何をしていても君は誰かに注目されていて。
君を僕のものだけにしたいのに。
いっそのこと、周囲の人間の目を潰せたらいいのにと歪んだ感情まで露わになりそうだ。
もしくは君を部屋に閉じ込めてずっと僕だけのものにしておきたい。
誰にも見られないように、誰にも触れられないように。
そんな考えをしている僕は気持ちが悪いと自分でも思う。
僕は病気だ。
毎晩毎晩英二のことばかり考えていたら酷くうなされた。
英二が女の子と一緒にどこかへ消えてしまう夢。
怖くなって目が覚める。
大量にかいた汗は衣服にも布団にも染み込んでいた。
こんなにも君が愛しすぎて僕はどうかなってしまいそうだった。
苦しくて辛い。
翌朝。
朝練で部室を訪れれば、今日も天真爛漫な君がいる。
いつものように明るく僕に挨拶をしてくれた。
一度安堵するも、その微笑みは別の人間にも降り注がれていく。
また胸が締め付けられていった。
だからといって自分の気持ちは伝えられない。
意気地無しで勇気のない弱い僕。
拒否をされては絶対に生きていけない。
だからこそ僕は今ある幸せだけを大事にして。
ますます君依存性になっていく。
