学生生活が終わってしまった。
今の俺には…。
「英二の生活は僕が面倒を見るから安心して」
「な…なに言ってるのさ!カッコつけなくたっていいんだからね!養ってもらわなくたって」
「どの口が言うのかな」
「いでででっ…ひーっ!ごめんなさい〜」
俺と不二は一緒に暮らしている。
んでもって俺は今のところフリーターである。
一方、不二はフードサービスの社員になった。
月収は明らかに不二がいいはず…と思っていたら意外に俺と変わらなかった。
まぁ俺の場合は昼と夜の仕事二つ掛け持ちでやってるせいだけど。
不二が飲食店で働くイメージはあんまりなかった。
カフェとかならイメージあるけど、まさか居酒屋のチェーン店で働くとは。
しかも初っぱなから死にそうな顔してるから辞めて欲しいとさえ思う。
居酒屋ならバイトでいいんじゃね?
とか言ってみたけど不二はすぐに辞めたくはない、の一点張り。
確かにこの氷河期の中で内定もらってんのはすごいと思うけどさ。
他にもIT企業とか金属工場とか次々内々定もらってくるから嫌味なヤツ〜!って思ったけど、なんでフードサービスに行ったのかは最初わからなかった。
「他の企業は確実引っ越しが必要だからさ。英二と離ればなれになるのは嫌だからね。居酒屋チェーン店は都内にしかない、まだ小さな店だから就職したんだ。勤務も大事だけど場所だって大事だよ?」
「だったら俺がついていくから不二は好きなとこに行ってよかったんだよ?バイトは探せばなんとかなるし」
「またまた英二は…。慣れ親しんだこの土地に二人で一緒にいたいよね、って思ったからいいんだよ」
人生プランなんざ考えたくないってのに時間は刻一刻と過ぎていき。
気付けば社会人で、働かなきゃいけなくて、不二と一緒にいたくてもかなり努力しないと生活すらできなくなる。
油断禁物、ゆとりはない。
だからデートもないし、夜だって何もナシ。
体力が互いに持たない。
せっかく二人暮らしができるとわくわくしていても、結局は毎日日を追うので精一杯。
「英二ー」
「なに?」
「揉んで」
「あぁ、肩ね。ほいっと」
「違う違う…こっちだよ」
不二が指差す箇所は下の方であって。
様子が普段と違うのは俺じゃなくてもわかる程だった。
視覚で捉えてしまったためかやたら俺が恥ずかしくなってしまって、バカ!と大声で叫んでしまった。
でも誘われたら断る理由なんかなくて。
むしろ俺からしたくて不二を押し倒す。
ちょっと!という抗議の声は聞こえないフリをして。
がむしゃらに不二のに触る。
「…乱暴。もっと優しくしてよ、僕…繊細なんだからね!」
「何言ってんの、キモチワルイ」
人生どうであれ、俺は自分が納得していればいいと思う。
だから今の俺はイキイキしてると思うんだ。
普段からは想像もできないようなことを平気で言ってのけちゃう不二が好き。
不二が一緒だからこそ…俺は生きていける。
不二に感謝の意を込めて、ありがとうって思った気持ちはあえて内緒にした。
だって不二ってばすぐ調子に乗るんだもん。
