窓を開けて新鮮な空気を吸うとき。
俺のココロの色はスカイブルー。

汗をかいてスポーツドリンクを飲むとき。
俺のココロの色はクリアホワイト。

隣にいる不二が消しゴムを貸してくれたとき。
俺のココロの色はチェリーピンク。


…と密かに小さなノートに詩を書いているのは中学3年生の14歳、菊丸英二です。
俺がこんなことをするなんて本当に本当に自分でも信じられないんだけれど、書いてみたらだんだん楽しくなっちゃって、今では書かない日がないくらいになっていた。
でも詩を書くのが趣味だなんて言ったら絶対馬鹿にされる。
特に桃に!
だから俺は密かに書くことにした。






日差しを浴びたとき。
俺のココロの色はハニーイエロー。






「何してるの?」

「わっわっ…不二ぃ!びっくりさせないでよ!!!」

「ふふっ…ごめんね。一生懸命頑張ってるから何書いてるのか気になっちゃってね。あ、もしかして詩を書いてるの?」

「へへっ…恥ずかしいけどね。最近はまっちゃってさ」






ふぅん、と言うと不二は俺の隣に来て詩を覗き込んだ。
俺は見られちゃマズイページは強く手で押さえた。
今開いているページは風景のことしか書いてないけど、前のページを捲ると不二のことが書いてある。
恥ずかしいってか、俺の気持ち知られたら生きていけないから必死に隠した。

…そう、俺は不二が大好き。
友達としてってのも、もちろんあるけど恋愛対象としてが一番かな。
優しいし、髪綺麗だし、カッコいいし…んでもって時々腹黒いことを言うとこがギャップがあって楽しい。
だから好き。
でも自分の気持ちなんて言えないからずっと隠してる。
告白は考えてない。
付き合って、と言って玉砕して話せなくなるくらいなら、友達のままで話してる方がいいから。






「可愛い詩だね。英二、詩人になれるんじゃない?」

「えへへ〜ホント?」

「うん、綺麗な詩だと思うよ。…他にも読んでみたいな、ねぇ…前のページ見てもいい?」

「へ?!だ…だめ…」

「え…いいじゃない、見せてよ」

「見せられるのはこれだけ!後はダ…ダメだってばっ…!!」






必死に隠すから尚更不二は気になってしまったらしい。
不二は俺からノートをとり、前のページを捲った。
当然、カラーをチェリーピンクなんて書くから変な奴と思われたに違いない。
俺はたぶん顔が真っ赤になっていた。






「フフッ…なるほどね」

「返せってば!」

「詩が可愛いのもそうだけど…英二が可愛いんだね」

「な…なに言って…!」

「顔が赤くなるとこがますます可愛い」






顔を近付けて言うので俺は思い切り恥ずかしくなって目を逸らした。
照れている俺を面白がって笑うので俺は詩のノートで顔を隠す。
その行動が可愛いとかまた言って…俺のことバカにしてんのかよ!






「じゃあもっと英二に詩を書いて欲しいから…僕と一緒に旅をしない?」

「た、旅?」

「そ。僕はカメラを持って行くから、英二はペンとノートを持って…僕達ココロの色を満たしに行かない?」

「そ…それいい!行きたい!」

「じゃあ決まり。早速今日の帰りに公園へ行こう。ストリートテニスコートの!」






不二と旅する。
胸の高鳴りが抑えられないとき。
俺のココロの色はファイアレッド。