夕暮れの空にカラスが飛んでる。
今日は部活がないから早く帰れる。
高校生になって授業も難しくなったりした。
俺は毎日ヘトヘトになりながら帰宅すると、携帯が鳴り出す。
誰かと思って見ると不二からのメールだった。
最近学校のことで手一杯だからたまにはどこかに行かないかっていう、遊びの誘
いだった。
確かにどこかに出かけるなんてしばらくしてなかったから俺はOKの返事をした
。
不二は俺の大事な友人だ。
でも…実はついこの間、不二に告白されていた。
返事を待たせるだけ待たせて、結局断る結果になって…
俺は不二が嫌なわけじゃない。
ただ戸惑っていただけなんだ。
男から告白されたことが初めてだったし、今まで部活仲間・友人として付き合っ
てきたわけだから…気持ちが整理できずにいて。
そんなことがあってから不二とは気まずくなっていた。
断ってからも今まで通りに接しようって話してたけど、実際今まで通りにっての
はそう簡単ではなくて…
不二も俺も自然と互いを避けていたんだ。
そんな中で今、不二から誘いが来て驚いたけど…今まで通りの関係に戻すために
はいいきっかけになるんじゃないかって思ったんだ。
何をしようかとメールを返して話し合った結果、買い物になった。
不二は新しいシューズを買いたいらしい。
なんだか不安もあったけど、今までのぎこち無さをなくすには一番だと思った。
過去に不二が可愛いって言ってくれたピンクのパーカーを着ていくことにした。
たまたま姉ちゃんが買ってくれたんだけど、告白のことがあってから着なかった
服。
こんなの不二と出かけるときに着るもんじゃないかって思ったけど…仲を以前み
たいに戻したいから着る。
もしかしたら不二は覚えてないかもしんないし。
「英二!こっちだよ」
「ごめんっ!ちょっと遅くなっちゃった…」
「大丈夫だよ、僕も今来たばかりだから…あ!可愛いパーカーだね、やっぱりそれ君に似合うよ」
「そ、そう?よかった…」
楽しそうな不二の顔。
俺も一緒に笑う。
さりげなく中学の頃を思い出していた。
まだつい最近のことのように思える。
「僕だけの買い物じゃなくてさ、君の買い物もあるならしようよ」
「俺?ん〜買いたいものなんてないけどなぁ」
「英二に付き合ってもらうだけじゃ申し訳ないからさ…買うものなくても行きた
い所とか」
「じゃあ…不二ん家でゲームしたい」
「僕の家?いいけど、何か持ってきた?」
「ん〜、ある」
家行きたいなんておかしいかな。
言ってから後悔しても遅いんだけどね。
でも不二は受け入れてくれた。
よかった。
近くのスポーツ店では置いていないシューズだったので、電車に乗って遠出をす
る。
日常の、なんの変わりばえもない会話をした。
不二も自然に話してくる。
俺が意識しすぎていただけなのかもしれない…。
地元より大きなスポーツ店は品揃えもよく、不二の欲しかったものは手に入った
らしい。
ここまで来た甲斐があったね、なんて言いながら歩いているとコーヒーショップ
があった。
一休みしようかと不二が言ったので二人で入ることにした。
期間限定メニューのサンドイッチが美味しそうだったので注文することにした。
不二はブラックでアイスコーヒー、俺は苦いのダメだからガムシロとミルクを通
常の二倍入れる。
足りなくてもう二つガムシロ入れたら甘すぎじゃない?って不二に言われちゃっ
た。
そんなに甘くないのに。
美味しいサンドイッチも食べて気分も落ち着いた頃、店を出た俺達はせっかく来
たのでぶらっと街を歩いた。
ペットショップにいた猫は俺みたいだとか、服屋で似合いそうなものを眺めたり
、とにかくいろいろ…。
でも男友達のお出かけってより女の子の買い物みたいだった。
なんか違うよな〜って思ったけど特に深く考えることもなくて、不二の家に行く
ことにした。
「あんまり片付いてないけど…どうぞ」
「え、これで片付いてないとか…そんなこと言ったら俺どうなるの…」
すごく綺麗な部屋だった。
前も来たこと…みんなでだけどあったんだよね。
そのときよりサボテンが大きくなってる。
「楽にしてて。僕お茶持ってくる」
緊張してるなぁ…自分。
実はゲームなんて持ってきてないんだよね。
中途半端な気持ちでいたくなかったからちゃんと自分で答えだそうとして悩んだ
。
その結果…俺は不二にまだ好いてもらえてるなら付き合おうと考えた。
付き合ったことがないからどうなるかとかわかんないけど…不二は優しいし、一
緒にいて楽しいし…もちろん俺のことなんてもう好きじゃないだろうなって思う
けど。
でも俺の気持ちを伝えたいから。
不二が好きだって、言いたい。
俺は意を決して不二に告白した。
どう思われてもいい。
とにかく伝えるだけだ。
「あのね…不二に大事な話があるんだ。ちゃんと聞いて欲しいの」
「どうしたの?」
「俺ね、考えたんだ。この間はちゃんと考えられなくて、どうしようって迷ってて…
だったら中途半端な答えは出さない方がいいだろうと思って…」
「うん」
「俺、やっぱり不二のことが好きだ。付き合ってくれない?」
自分勝手なことぐらいわかってた。
でもどうしても言いたかった。
これは自分でちゃんと出せた、しっかりとした答えだから。
言わなきゃダメだって思ったから。
たとえこの告白がダメになったって構わない。
その覚悟ぐらいはできている。
だけど返事はOKだった。
信じられない…。
「そう言ってくれるなんて…嬉しいよ。待っていた甲斐があった。本当に…
嬉しい…」
「そう?」
「また明日…明日から仲良くしてもらえるかな。今度は友達じゃなくて…」
「恋人ってことで!うん、いいよ!!」
やっと心の奥底から笑えるようになった。
