いつもの登校。
いつもの授業。
いつもの昼休み。
いつもの部活。
いつもの下校。

変わらない毎日が続いていていく。
そして今日もまた君は彼と一緒に帰るんだね。













恋人ができたと聞いて愕然とした僕。
嬉しそうに紹介する君。
戸惑っている彼。
おかしな三角関係ができていた。
僕より背が高くて、やや筋肉のある彼は英二と気が合うからと付き合ったらしい。
バスケ部でたまたま通りかかった英二にボールが当たり、そこから進展したとか。
聞きたくない話を延々とされて腹が立った。

英二も英二だ。
喜んで話すな。
そんなこと。






「それでね、俺が恥ずかしがってんの知ってて、もっとやれ〜とか言うの。サイテー!」

「何言ってんだよ、そう言いながら英二は嬉しそうにしてたじゃねぇか」

「ばっ、ばか言うな!ちが…」

「そうなの。へー。楽しそうでいいね。じゃあ僕日直の仕事あるから」






構ってられるか。
なんで英二はあんなにも幸せそうな顔してるんだ。
僕は英二が好きなのに。
さりげないアピールをしても気付いてもらえなくて、英二は恋とか好かれるとかわかんないのかな?って思ったけど、今こうして彼氏がいるのを見ると僕は積極性が足りなかったのか?とも悔やむ。
だからと言って僕は英二を諦めたわけじゃない。
このまま引き下がっていられるか。


英二のことをもっと知ろうと、常に英二と行動した。
やっぱり同じクラスというのは都合がいい。
英二の好きなことから嫌いなことまで知り尽くそうと努力した。
どうしても一緒にいられない場合は陰から様子を伺った。
特に彼氏と行動するときは二人きりになるから僕の入る余地などない。
追いかけて、追いかけて…追いかけ続けてついに一冊のノートができた。
これは英二のことが全て書かれたノートだ。
乾みたいだって?
仕方ないよ。
彼に勝つには英二をどれだけ知っているかが勝負なんだ。

そして僕は英二の彼を呼び出した。













「あのー…俺に用ってなんですか」

「さぁなんだろうね?」

「あれ、俺間違えたかな…英二から聞いたんで俺の勘違いかもしれ―――」

「いや、間違ってないよ。呼び出してくれって言ったの僕だから」

「あっ、そうなんですか!てっきり間違えちゃったか英二が―――」

「まずさ、その名前で呼ぶのやめてくんない?僕は君を英二の恋人だなんて認めないから」

「…え?」

「君は何にも知らないだろうね。どうせ表面だけ見て決めたんだろ?可愛いーとか簡単にヤれそうーとか。英二のことなら僕の方が知ってんだから!」

「…はい?」

「にゃにやってんの〜?俺も混ぜて混ぜて〜」






何も知らない英二が来た。
僕の表情を見るなり怯えて戸惑っている…かと思ったのに、英二は笑っていた。






「お疲れさま〜、意外と長くかかってごめんね?」

「あぁいいよ。けっこう楽しかったし。また何かあったら声かけろよ」

「うん!じゃあね!」

「ちょ…英二どういうこと?お疲れさまって…」

「不二ってば鈍感だな〜今までのはただの劇みたいなもんだよ〜気付かなかったの?」






僕は困惑した。
彼氏じゃなかったというのか?
まさか…






「さっきの彼氏役はあっちゃんっていう大石と同じクラスの奴だよ〜!大石に頼んでもらったんだ〜」

「じゃああれは…彼氏じゃないのかい?」

「そーだよ〜!不二にヤキモチ妬かせたくてね。だって不二ってば俺に直接言ってくんないんだもん。告白待ちだったんだから」

「僕の…告白待ち…。ど、どうしよう…彼氏役の人に罵声浴びせちゃった…。酷いこと…」

「大丈夫!俺ちゃんと言ってあるし、あっちゃん楽しんでたからね〜。あっ!あとノートは没収したからね!俺のことなんて調べないでさ、もっと話しかけてほしかったな」

「なっ!いつの間に!?…ノートのこと、知ってたんだね。…僕のやり方は間違っていたんだね」

「うーん…間違ってるとは言わないけど…不二ってストーカーみたいだなっと思ったよ?」

「ス!ストーカー!?ち、違うよ!!僕はストーカーになんてならな…」

「そ?ならいいけどさ。じゃあ俺行くね」






英二は僕に手を振ると先に行ってしまった。
あっという間に話が終わってしまって僕はどうしたらいいかわからなかった。
ただ立ちすくんでいると、英二も歩くのをやめてこっちを振り向いた。
その英二の顔ときたら、まるでハリセンボンみたいに膨らましていた。
とても不満そうにしている英二はドシドシ音を立てながら僕のところまでやってきた。






「ふーじー!お前ほんっとに不器用!陰気臭い!暗い!ネチネチのじっとじと!カビみたい!!!」

「…は?」

「お前なー、人が先に行っちゃったら追っかけんのが当たり前だろ〜!?なんでこれで引っ込んじゃうんだよ〜!だからカビだって言ったんだっ…え…?」

「人をカビって言わないよ?普通。…英二、散々僕にいろいろ言ったけど…」

「わっ…わ…タンマ!待って!ひゃ…!」

「僕は感情を抑えてただけだよ?引っ込み思案じゃない。大体僕だって言わせてもらえば、ヤキモチ妬かせたいから別の男を連れてくるなんて酷くない?付き合わされた相手の人にだって申し訳ないって気持ちあるのかな?…積極性に欠けた僕だけが悪いのかい?実は完全受け身体勢の英二にも問題があるんじゃないかな?ねぇ、僕が悪いの?英二はどうなの?悪くないの?」

「す、すいませんでした…」






本気になってキレたわけじゃない。
でもちょっと英二に口出ししたくて言っちゃった。
英二はしょぼんとしていたから僕はぎゅっと抱き締めた。






「嘘だよ…言い過ぎた。英二、ごめんね」

「いいよ。俺が余計なことしちゃったんだし。こんなやり方すごく遠回りだもん…。俺ね…不二が好きだよ?」

「うん、ありがとう。僕も英二が好きだよ。…よければ僕と付き合ってくれる?」

「うん!!」






遠回りでもいいんだ。
追いかけた結果、僕は英二と付き合えてよかった。