窓辺に置かれたサボテンの隣に、小さなガラス製の箱がある。
透明な青で構成された、その箱の中にある金属のネジをクルリと捻れば奏でる綺麗なメロディ。

僕の好きな音楽の、オルゴールの…音。






ふと目を覚ませば昼間の1時だった。
今日は珍しく何も予定がない。
いや、珍しくはない。
今までが部活に追われて忙しかっただけで今は暇だ。
暇と言うには語弊がある。
けして暇なわけじゃない。

いざ部活を引退して受験シーズンとなったとき、机に向かうも長く続けることが出来なくてペンを投げてしまう。
確実に以前より集中力がなくなった。
部活を引退したからというのもある。
でも理由はそれだけじゃない。
自分が一番わかっているはずだ。






エスカレーター式に入るとはいえ、学力を下げるわけにはいかず常日頃から勉強に取り組むわけだが、やはり問題を解くことは出来ない。
難しいからでも、面倒だからでもない。

伝えたくて仕方ないからだ。






学校にいても孤独のように感じる。
周りに人がいないわけではない。
自分に話しかけてくれる人だっている。
英二は隣の席にいる。

笑みを絶やさずに話していることがつらい。
本当のことを言いたいのに、本音を言えない自分に苛々した。

伝えられたらどうなるか。
今までの関係が壊れたら厭なんだ。
だから言えないんだ。






家に帰って自分の部屋へ行く。
今日はオルゴールをまだ聞いていない。
いつものようにネジを回す。

奏でる綺麗なメロディ。
このオルゴールを聞いているだけで僕の心はどれだけ癒されるだろう。

まるで英二がそこにいるみたいだ。
何故なら…このオルゴールは英二が僕にくれたものだったから。
何か深い意味があったわけじゃなく、ただ英二が気に入ったから僕の分も買ってきた…だけなんだけど。
それでも嬉しかった。






「今度は僕から何か送ろう…英二は何を喜ぶかな」