電池に+と−があるように、人間にも+と−がある。
そのいい例が俺と不二だった。
俺達は中学から部活で知り合い、2年生からはクラスも一緒になって話す機会が増えるようになった。
それから高校は青学の高等部に進学したけど、その頃から何かが狂い出した。
不二の様子が変なんだ。

具体的には、まず元気がない。
昔はSな発言を中学生ながら人に言ったりした。
余裕もあった。
だから口じゃ不二になんて勝てたことなかったのに、今じゃ何を言っても言葉が返ってこない。
俺は壁と話してるみたいだった。






「ねぇ、不二。何か悩みあるなら俺、聞いてあげるよ?言ってみなよ」

「…何もないよ」






ないわけないじゃん。
誰がどう見ても昔の不二とは違う。

元気がないから話をしても盛り上がらないし、不二から話もしてくれない。
そう、いわゆるマイナスのオーラがあるんだ。
だから俺は不二に元気になってもらいたくてふざけたことを言ったり、冗談を言ったりするんだけど…無反応。
どうすりゃいいんだよ!!




















「はぁ…」






不二とまた同じクラスになったから、話しかけようとするけどあんなに無反応じゃ俺までマイナスオーラを纏って暗い気分になっちゃう。
欝ってこういうところから始まるのかな…。

窓から景色を眺めて溜め息をついていると、不二から珍しく声をかけてきた。
これは高等部なってから初めてかもしれない。
だから驚いてしまって俺は肩を震わせていた。






「…英二さ、僕の悩み聞いてくれるんだよね?」

「え…?う、うん…聞くよ?」

「ありがとう…じゃあ早速言わせてもらうね。僕、英二が好きなんだ」






俺は頭が真っ白になった。
不二の言っていることを理解したいんだけど理解できなくて…口をぱくぱくしていた。

不二が俺を好き?!







「言おうか言わないかものすごく迷ったんだ…でもこのままでいても、きっと悩みが長く続くだけで何も解決なんてしないって。だから…言ってみることにした」

「で、でも…俺…男だし…」

「そんなの知ってるよ。英二だから好きなんだ。男と女って…そんなに大事かな」

「それは…!たぶん…ない」

「僕と付き合って下さい、お願いします」






軽く頭を下げた不二。
お願いしますって言われても…俺どうしたら…






「恋人とか堅苦しいところから入らなくていい、今までどおりでいいんだ…ただ僕が我慢できなくなったら英二に触ったり、抱き締めてしまうかも」






考えたら体が急に熱くなってきた。
触るとか抱き締めるとか…俺に全く恋愛経験がないからすごく戸惑ってしまう…






「僕だって初めてなんだ…困惑しないで。ね?」






不二に笑顔が戻った。
もうマイナスオーラなんてない。
俺のプラスオーラが不二にも伝わったんだ。

どのようにして恋愛をすればいいのかわからないけど、不二が元気になってくれたのはよかった。
俺がもっと不二を元気にさせたいと思った。
俺はゆっくり頷いた。