今まではただ毎日をこなすだけだった。
何も考えないで、与えられた事をやるだけ。
子供の頃はそれでよかった。
だけど今は単純な思考で生きるのは不可能であって。
何も知らないフリだって出来なくて。
嫌な場面に遭遇しても誰かに話す事も出来ないし、悩みを話せる相手もいなくて頭の中は螺旋を描くようにぐるぐると回る。
いずれも悪い内容で自分の思考が腐っていく。
もう後戻りは出来ない。
ゲームのようにリセットボタンが人生には無い。
電源コードを抜く事も出来ない。
もう行き詰まって毎日が苦しいだけだった。
どうしたら開放されるのか。
どうしたら楽になれるのか。
考える事は皆良くない事ばかりだ…
こんな時、あいつだったらなんて言うのだろう。
俺を励ましてくれるか。
それとも一緒に堕ちてくれるか。
もどかしくなり俺はあいつを想像しながら自分のものを弄り始めた。
あいつに会いたい。
強く願った時、弾けるように白濁した液体は頬にまで飛び散った。
自分の携帯電話を握り締め、あいつ…不二の番号を表示させたままにして俺は溜め息をついた。
いざ連絡を取ろうと思っても一歩踏み出す勇気がない。
不二とは昔、よく遊んでた。
あれは恋愛感情で付き合っていた、というよりは友情のまま付き合ってた。
不二の家に行ってはベッドで裸になって遊んだり、お互いのものを触り合ったりした。
特に意味はない。
ただ遊んでいただけ。
お互いに好きとも言わなかったし、デートとかだってしていない。
微妙な関係だった。
「電話…しようかな」
今は誕生日になるとおめでとうメールが来るだけ。
会って話をしたりはない。
だからこそ、今会いたいと思うのかもしれない。
俺は携帯のボタンを押した。
電話なんてまず繋がらないのが当たり前。
出るわけない…そう思ったらぷつっと音がした。
もしもし、と聞こえる不二の声。
以前に増して、声が低くなっていた。
「ふ…じ」
「なぁに?英二…クスクス。久しぶりだね?」
「うん…今さ」
「ん?」
「会いに行ってもいい?」
俺も不二も引っ越しなどはせず、以前と同じ実家暮らしだった。
だからすぐに会いに行けた。
出迎えてくれた不二はいつの間にか男らしく筋肉がついていて、身長も伸びていた。
珍しくタンクトップなんて着ちゃってる。
まるで海堂みたいだった。
「英二は前に増して可愛くなったね。肌白いし華奢だし…髪も伸びたね」
「う…女に間違えられるんだ…髪切っちゃおうかな」
「ダメだよ、全体的に角切りにしちゃって下さい、とか英二が言ったら僕泣くよ」
「さすがに角切りはないよ!」
あははと腹を抱えて笑いまくった。
時間はあの時に戻ったよう。
さっきまであんなに鬱だったのが嘘みたいだった。
不二と一緒にいることがこんなにも楽しいなんて。
不二はじっと俺を見てから手を俺の頬に添えた。
「やっと笑った…本当は…僕に何か言いたかったんじゃないの?」
「う…」
「いいよ。僕に全部話しなよ。英二の辛いことは僕が全部吸収してあげる。ねぇ…久しぶりにシようよ。英二もそのつもりで来たんだろ?」
「あっ…ン…いきなり…?」
「だってもう勃ってる」
「はぁ…ん…や…触っちゃ…やぁあんッ!!!」
後は頭が真っ白になるまで腰を振った。
やっぱりこの快感が好きすぎる。
俺も不二もこの行為が好き。
だから合う。
一緒にいたいと思う。
堕ちるのも一緒に付き合ってくれる。
お互いをわかってるからなせる関係なんだ。
俺の中の迷いはずっと螺旋上にぐるぐると回っていたけれど、ようやく答えが出せそうだ。
ねぇ…不二。
しばらくして落ち着いたら俺の気持ち…伝えていいかな。
不二が好き
って
