魂を鎮める歌を捧げながら俺は涙を流した。
以前飼っていた金魚を埋めた土の前で静かに祈りを捧げる。
これは大切な大切な金魚だった。
お祭りで頑張ってとってくれた不二の金魚だった。
それは昨年の夏祭りに遡る。






不二に思いが通じてから初めてデートとして夏祭りに行った。
もちろん俺は不二と夏祭りに行った事がなかったわけじゃないけれど、あれは青学のテニス部皆で行っただけだし、デートとかじゃなくてただの遊びだった。
だから不二と一緒にいられるわけでもなく、会話もほとんど出来なかった。

付き合うようになってからは皆と遊ぶ回数より不二と二人きりで遊ぶ回数が増えてすごく楽しかった。
そして初の夏祭りデート。
俺はたくさんはしゃいで、綿菓子を買ったり、たこ焼きを食べたり…そしたら不二に呆れられちゃったんだ。
食べ物ばかりって。
人間食べる事をやめたらおしまいなんだぞーと言ってやったりして不二のことポコポコ叩いたりした。

そんな中で不二は俺に何か欲しいものはないかって聞いてきたんだ。
俺は目の前にあった屋台を見て、じゃがバター!と言おうとしたけどまた呆れられちゃうかな?と思ってその隣の金魚掬いの屋台に目をやった。
可愛い赤い金魚から真っ黒黒助の出目金もいて、不二におねだりをした。
いいよ、と軽く承諾した不二。
でもあのポイって簡単に破れちゃうから多分難しいよな〜なんて思ってたのに、不二はささっと水から金魚を掬い上げた。






『あれ?まだポイ破れてないのにやめちゃうの?』

『うん…英二と僕で1匹ずつ飼おうよ』

『そーだね!』






そうして俺は不二のとってくれたその金魚を大事に飼う。はずだったのに。
長く生かしてあげたかったのに1ヶ月もしないうちに死んでしまった。
餌もあげたし、水も換えてあげたし、ポンプだって入れてあげたのに…
不二にごめんと伝えたら優しく抱き締めてくれた。






「お祭りの金魚は長生き出来ないよ…仕方ないさ。英二はちゃんと世話をしてあげてたんだからちっとも悪くなんかないよ。だから元気出して…ね?」

「うん…」

「それに…僕の金魚も昨日死んじゃったんだ。だから…気にしないで」






不二は優しく俺の頭を撫で、俺は気持ちよくて不二の肩に頭を預ける。
それでもやっぱり気になっちゃって俺はまた涙を溢す。
不二が落ち着かせてくれるから俺は安心してしまった。
ありがとう。
それからごめんね。

金魚へのレクイエムを心の中で流した。