幸せの定義ってなんだろう。
深く考えれば考える程わからなくなる。


お金を沢山持つことが幸せなのだろうか。
それとも恋人を作ることが幸せなのだろうか。

いずれにせよ、僕に今…幸せという言葉は似合わない。








人は求め始めたらキリがない。
たとえ欲しいものが手に入ってもまた違うものが欲しいと思う。
貪欲だから幸せだと感じることはないんだ。















ふと隣を見れば僕と違って、太陽の光をたっぷりと浴びた彼が眩しく輝いている 。


いいね、君は。
明るい君が羨ましい。
僕みたいに深く悩むこともなさそうだし、常に幸せなんだろ。








「不二?どうしたの…元気ないよ」

「…」







もはや返事すらできない自分がいた。
幸せって何。
何のために僕は生きてるの。

だんだん苛々してきて配られていたプリントをぐしゃりと握り潰した。
僕の行動を見て異常と感じたのか後退りをした英二。

僕が怖いかい。







「あ、あのさ…ひる!昼ごはん食べよ?ね!」

「…じゃあ屋上で食べようか」

「屋上?う、うん」







幸せがわからない僕に教えて欲しいんだ。
僕にとっての幸せ…幸せ…















「ふにゃ〜気持ちいい〜!天気晴れててよかった〜」

「…そうだね」







明るい日差しは目障りにすぎない。
雨でも降ってしまえばいいのに。


と、ちょっと心の中で思っただけなのに空は僕の言葉を鵜呑みにして、太陽の光 を遮るように厚い雲が広がり始めた。







「あれ?せっかく晴れてたのにー。なんか雨降りそう…早く食べよ、不二」

「…」

「さっきからどうしたの?!全然元気ないじゃん!…俺でよければ悩み聞くよ? ねぇ、言ってよ!!」

「…教えてよ」

「え…?」







僕は弁当箱を払って英二を押し倒した。
その瞬間、雷が大きく鳴り響き…ついに雨が降りだした。







「やだ…どう…したの…不二…」

「英二…幸せを教えて」







英二の首に噛みついて出血させた。
軽く表面だけを噛んだから痛かったらしい。
英二はこの時点で僕を人間だとは思っていない。
きっと獣か何かに見えたんだろう。
ひどく脅えていた。







「何するんだよ!」

「幸せって何?僕は平凡な毎日に幸せなんて見い出せない」







そう、全てがウンザリだった。
中学なんて義務教育の檻。
何もかもやめたくなった。
幸せなんか感じられない。








「まだ僕は経験したことないから…きっと幸せだと感じるはずなんだ。だから英 二、ヤらせてよ」

「な、何をだよ!!」

「セックスだよ」







天気は豪雨となり全身がびしょびしょになった。
髪から切れ間なく雨が滴り落ちる。







その時英二は僕の頬を叩いて突き飛ばした。
英二は立ち上がると突然服を脱ぎ出した。








「英二…?」

「…ヤれよ。そんなにヤりたかったらヤればいいだろ!!」







キレた英二は次々と服を脱いでいく。
まさかと思ったけれど屋上だっていうのに下着一枚残さず脱いでしまった。
完全に全裸になってしまって僕も目のやり場がない。







「不二は中途半端にいい人ぶってんだよ!ヤりたいならヤればいいのに躊躇なん てしてさ!バカみたい!!」

「…英二」

「幸せ感じたいなら…俺がこれからいっぱい幸せにしてやる」







英二はそのまま僕に抱きついて自分が下になるように僕と身体を絡ませた。
そんな…英二…こんなことされたら一体僕は…







「いっぱいい〜っぱい幸せにしてやる!んでもって不二はこれから俺のために生 きるの!」

「英二、でも僕は」

「問答無用!早くして!」







信じられない…こんなことになるなんて。
英二はこれから僕を幸せにするって?








「不二は俺と付き合うの!自分のために生きれないなら恋人のために生きて!わ かった?」







小さい子に説得するように英二は言った。
言われるがままに僕は英二を抱いた。

初めての経験だった。

こんな激しい気持ちになったのは生まれて初めてだ。
恋人を愛おしく思う…これが幸せなのか。







「んぁ…!あぁぁぁッ!!」

「はっ…あ…英二!大丈夫?!」

「う…うん…へーき。不二、上出来だよ…今…俺幸せだったよ」









不二は幸せだった?って聞かれたのでゆっくりと頷いた。

気が付けば天気は晴れに戻っていて虹がうっすら見えた。