もう少しで俺の王子様が現れる。
待ち合わせまであと10分もない。
珍しいって思うかもしんない!
だって俺が早めに来るなんて滅多にないことだよ?
こんな余裕を持ってまで会いたいっていう奴は俺の愛してる人
だからね!
さっ、もうすぐ来るぞー。
「お待たせー」
「おはよん!不二♪」
「おはよう、英二。なんだか笑顔で溢れてるね。そんなに僕との
デートを楽しみにしてくれてたのかな?」
「そりゃそうでしょ!!だってこんな事滅多にないじゃんか!
都合が合わなくてさ!デートしたくてもなかなか時間が取れないんだもん」
俺達はどっちも就職活動を失敗し、現在ニート。
あちゃちゃ…なんだかないよなー。
今まで失敗がなかったわけじゃないけどさ…ここまで来るともう
人生どうにかなるさ理論で。
俺はそんな軽い気持ちで生きてるけど、不二は
就職に関してやる気がないわけじゃない。
だから毎日ハローワークに通ってるし、忙しいみたい。
俺はそんなに頑張りたいなんて思ってないんだけどねん。
不二はまじめ。
いいことだよ、まじめになれるのは。
俺なんて働いたら負けとか言っちゃってるし。
「英二もさ、就職諦めないでよ」
「えー?面倒だよー仕事なんて。一生ニートでいいよ」
「何言ってるのさ。まさか親に一生面倒見てもらうつもりなの?
だったらそんな甘い考え捨てた方がいいよ」
「そりゃわかってるけどさ…現実的に考えたくないんだって」
と、せっかく俺を励まそうとしてくれてる恋人の言うことも
聞かないで。
俺って馬鹿だね。
でもさ…ツライことばっか考えてるのって俺…本当に
嫌いなんだよね。
だから先のことも考えてないんだ。
「僕も手伝うからさ。英二、一緒に頑張ろうよ」
「不二がそこまで言ってくれるなら…やる!」
俺は不二の左手をギュッと握り締めた。
もう考えない。
これからは不二と楽しいデートだもん。
「今日のデートスポットは何処なの?」
「今日は暑いから…水辺にでも行こうかなってね。
近くに綺麗な湖があったよね。あそこに行ってみない?」
不二が行きたがってるのがよくわかったので俺は頷いた。
だって断るわけにもいかなかったし。
本当は俺だったら町中歩いていろんなもの食べたり、
ゲーセンで遊んだり、遊園地に行ったりしたかったんだけどな。
ま、不二がいいとこって言うんだしいいや。
俺は不二と一緒にいることが大事だって思ってるし。
しばらく歩くとそこは水面がキラキラしていて本当に綺麗だった。
反射して太陽がギラギラ。
俺の顔もしっかり映る。
水も綺麗みたい。
「ここ何気にいいじゃん!不二、なかなかのデートスポットだと思うよ!
さすがだね!!」
「喜んでもらえてよかったよ。英二、あんまり気乗りしてなかったみたいだからさ。
連れてきてよかった」
自然にも恵まれたこの場所は多くの鳥達も集い、
見ているものの心を和ませてくれた。
普段は家にほとんど引きこもっていて外の空気に
触れることすらあんまりなかった。
だからなんだか新鮮だし、自分も浄化されていくような気がして
とても気持ちがよかった。
俺も…なんでこの半年家ばかり引きこもって
、ゲームばかりして…就職活動をしないでいたんだろう。
自分はもう今年で23歳になるのに。
「英二…このままでいるのはもったいないよ。
必ず僕らを必要としてくれる人がいる。そのためには
僕らがまず変わらなきゃいけない。幸運は待っているだけじゃ
掴めないんだ。自分から取りにいかなきゃダメなんだよ」
なんだか不二の言葉には重みがあった。
同じ年齢なのに…俺と違って大人だった。
俺は今まで何をしていたんだろう。
愚かだ。
とても愚かだと思えた。
「ねぇ…いい気分になったよね。ちょっとそこのベンチで休まない?」
「いいね…休もっか」
平日の今日は湖に訪れる人なんて皆無に近かった。
お年寄りですらいなかった。
こんな静かな場所で俺達は
淫らな声を出し合っていた。
「ふぅ…なんだかいいね。外は気持ちがいいや」
「うん…久々にシタからすごいよかった」
「もうこんななら僕ら一緒にルームシェアでもしない?
それでさ、一緒に就職活動しようよ。お互いに情報も
交換できるし。どうかな」
「いいね!うん…俺、不二と一緒に暮らしたいって前から
思ってたんだよ!!」
きっとそれは楽しい毎日が始まるに違いない。
俺は今からワクワクが止まらなかった。
すると…
「あ…見て。英二、これって蜃気楼だよ」
「え?本当?わ〜…キレイだね」
「きっと俺達を応援してくれてるんだにゃ」
「え?それは都合のいい解釈だよー」
「そんなことないよ!」
どうであれ、俺達に未来がなくなったわけじゃない。
俺達はまだ頑張れる。
きっと就職して不二と幸せな暮らしを築いていくんだ。
って考えたら…なんだかやる気が出てきた。
「俺、明日からやるよ!!不二も一緒にやろうよ!!」
俺は不二に決意した。
