「お前って誰にでも抱きつくよな、もう俺達終わりにしようぜ」
「待ってってば!俺が悪かったから別れるにゃんて言わないでよ!」
「…嫌がってばかりでヤらせてもくれないしな」
付き合って一ヶ月。
あっという間に終わった恋だった。
俺は告白された身でそこまであいつのこと最初は好きじゃなかったけど…付き合
ったところで求められたのは俺の身体だけ。
何にも得るものはなくて…悲しみだけしか残らなかった。
「辛い思いをしたんだね」
不二は俺のことをわかってくれる親友。
頭を優しく撫でて慰めてくれた。
男同士の恋愛だから上手くいかないんだ、と思ったけど不二はそんなことないっ
て言ってくれた。
付き合った相手が悪かったんだって不二は言う。
恋愛って難しい。
「気晴らしに何処か行こうよ、英二。君の好きな所…何処にでも付き合うよ」
「いいの?…じゃあさ、カラオケ行きたい」
大声出してストレス発散したい。
俺は不二と二人でカラオケに行った。
カラオケで歌うと言っても選ぶ曲は皆恋の歌ばかりで気持ちがブルーになる。
それでも不二が一緒に歌ってくれたり、腰に腕を回したりして不二が近くにいる
と感じたら…なんだかドキドキしてきた。
「楽しい?英二」
「うん!…ねぇお酒飲んでもいいかな?」
「いいよ、じゃあ頼もうか…僕も飲もうかな」
不二はコールしてお酒を頼んでくれた。
俺はカルアミルク、不二はカシスウーロン。
カラオケで飲むと高いけどたまにはいいよね。
「おいしい?」
「んー!おいしい〜」
時間が経ったらだんだん酔ってきて頭がクラクラしてきた。
目が回る。
「英二、大丈夫?やっぱりお酒弱いんじゃない?」
「んにゃ〜…そんなことないよ〜ん…」
その時胃から何か沸き上がってくる感じがした。
うぷっとなったら胃の中が空っぽになった。
やば…やらかしちゃった…
「ごめ…」
「…いいよ、僕が始末するから」
あぁ…申し訳ない…なんでこんなぐらいの酒で吐いちゃったんだろ…
普段もっと飲んでも大丈夫なのに…。
「お酒飲むべきじゃなかったかもしれないね…勧めた僕が悪かったよ」
不二が悪いんじゃないよ。
俺が悪かったの。
具合が良くなるまで横になって眠った。
不二は音量を完全にゼロにして上着を俺に掛けてくれた。
不二も一緒に寝ていた。
今は朝の五時。
もう夜のフリータイムも終わる。
俺達は料金を支払い、店を後にした。
この後の予定がない。
特にすることもなくて二日酔いに悩まされながらトボトボと歩く。
学校へ行ってもあいつの顔見たくないし…行く気がしないなぁ…。
「ねぇ」
「え?」
「サボっちゃおうか」
意外な一言に俺は驚いた。
あの不二からそんな言葉を聞くとは思わなかった。
でも俺もできることならそうしたかった。
「とりあえずお風呂に入りたいね。僕の家にでも行かない?」
「いいの?うん!行く〜」
シャワーを貸してもらってふと考えた。
恋愛って俺には無理かもしんない。
元々むいてないんじゃないかって思った。
始めから恋愛なんてしなかったら傷付かないし、失う物だって少なかったはず。
あいつと顔を合わせるのもできない今の状況で俺はこれからどうすれば───
「長かったね、溺れてるかと思ったよ」
「え〜?違うよ〜」
もういっそのこと何もかも壊されてしまいたい。
原形がわからなくなるくらいに。
「英二」
「なに?」
「僕ともう少し…一緒にいてくれない?英二のことが心配だし…す、好…き…だし…
」
「え?…最後の方聞こえなかった。もう一回言ってくれる?」
「ううん、なんでもない」
何を言おうとしたのかわからないまま今日一日不二と過ごした。
何が言いたかったのかな…
俺は不二のSIGNを見逃した。
その一週間後、不二から告白されたけれど断った。
親友のままがいいと言って。
今の不二との関係を壊したくなかったから。
でもきっと不二にはわかってもらえる。
俺のこと誰よりも心配してくれたから…
完全に傷が癒えるまでもうちょっと待ってて。
きっと…その告白を受け入れる日が来ると思うから…
