今年から新生活を始める菊丸英二です。
大学を卒業し、ついに社会人になりました〜!
…と言いたかった。
今ものすごく泣きたい…。
就活は大失敗をし、結局卒業した後はニートに。
もう!なんでこうなるんだよ〜!!!
大学時代に遊び過ぎたんだとか言うけど世の中のせいにしちゃだめだっていうの?
俺だって働く気がなかったわけじゃないのに。
でも泣き言を言っても仕方ないからとりあえずハローワークに行くことにした。
すると何処かで見覚えのある顔が。
不二だった。
「不二!お前も仕事探しに来たの!?」
「英二!久しぶり!そう、僕も仕事探しさ。まさか英二とこんなところで会うとは思わなかったよ」
会話が弾み、不二と話しているのが楽しかった。
仕事のこととかも忘れて結局話しただけで終わった。
何しに来たんだってーの。
「(不二…相変わらずかっこいいな)」
同性なのに何故かドキドキしてしまうのは一体何なのだろう…。
つい見惚れてしまった。
いけない、いけない…そんなこと言ったら不二に嫌われちゃう。
俺は家賃を滞納しているアパートに帰った。
ところで俺がこのアパートに住むようになって一つ気になることがある。
それは隣の部屋に住んでいる人。
隣人は俺くらいの年齢の男の人でよく恋人を連れ込んでる。
しかもそれは男なんだ。
びっくりだよね。
まぁそれはそれでいいんだけど、問題が少しだけあるんだ。
それは…夜。
良く言えば仲がいい。
悪く言えばうるさい。
なんにしても安いアパートだし壁なんてただのベニア板だからね。
聞こえちゃうのは仕方ないのかもしれない。
でもあれだけ盛んだと次の日とか大変そう…。
つい隣の部屋の人達を不二と俺に置き換えてしまう。
興奮して妄想しながら一人ですることもある。
不二には申し訳ないけど…すごく気持ちがいい。
だけど終わった後はやっぱり虚しさが残って寂しい気持ちが倍増する。
不二と付き合えたらいいのに。
…無理だけど。
しばらくして隣人が帰ってきたみたいだ。
早速二人で話している声がする。
もう半同棲じゃん。
またきっと今日も盛んにヤるんだろうと思った。
やっぱり声が聞こえる。
しかも今日はやたら大きい。
聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる。
あぁ…俺までしたくなってきた。
ダメダメ!
聞いちゃダメだ、そうだ耳栓すればいい。
そして俺は壁からできるだけ離れるようにした。
…これでいい。
毎日これが続くのかと思うと辛い。
俺は耐えられるのかな…。
翌日―――
ハローワークに行くとまた不二と会った。
内心いるに違いないと思って来た。
気付けば仕事のことは後回しになっていた。
俺は不二目当てでここに来ていた。
「おはよう、英二。今日もまた仕事探し?」
「そう簡単には見つからないからね〜…まっ、あんまし深刻になっても仕方ないからさ、気楽に…」
「ダメだよ、それじゃ。やる気でやらないと見つからないよ?」
不二は真剣だった。
軽率に考えた俺はとても愚かだと思った。
不二は書類を受け取るなり、一つ一つ項目を確認していった。
やっぱり不二はしっかりしているし、尊敬できるとこが多い。
ますます好きになった。
「そういえば英二ってさ、今一人暮らし?」
「そーだよ!でも家賃滞納でそろそろ出なきゃかも…」
「そうなの?じゃあ早く仕事見つけないとね。ところでさ、僕…英二の家に今日行ってもいいかな。まだ話し足りないんだ…もっと英二といたくて」
ま…マジ?
うわぁ〜い!!
不二が俺の家に来てくれるって!
すごく嬉しかった。
しかも俺といたいって言ってくれた!
すごく幸せ…。
俺は不二と一緒に帰った。
まさか不二といられるなんて夢みたい。
隣に、側に、近くにいる。
すごく呼吸がしにくい。
だって…好きな人ってだけで心拍数が上がっていくんだもん。
とか言ってみたり。
まるで少女マンガか!って感じだよね。
でもこういうときってどうしたらいいのかわからない。
「あっ…通り過ぎちゃった」
「え?自分の家なのに?」
「ごめん…ちょっとぼうっとしてた」
「もしかして…具合悪い?悪いなら無理しないで。僕また違う日に伺うし」
「大丈夫だよ!俺のうっかりミスだから…あ、ここなんだけど」
不二を自分の家に招待した。
…なんて言ってもこんな汚い部屋になんて本当は入れたくなかった。
不二が来るとわかってたらもっと綺麗にすればよかったけど…。
少し不二を外で待たせてすぐさま中をすっきりさせようと掃除をした。
あんまり見た感じは変わらないけどゴミが2袋分出た。
「おじゃまします」
「散らかっててごめんね」
「構わないよ。気を遣わなくていいから」
低めの声で囁かれて心臓がバクンと跳ねた。
どうしよう…このどきどき音が聞こえてるかもしんない。
なんとかごまかすためにジュースを入れてきたり、マンガを出してみたり、音楽をかけたりした。
これで俺の心拍が聞こえなければ…
しかし聞こえたのは俺の心拍ではなく、隣人の声だった。
「あん…っあ…!あ…ン…んぅ!!!」
「だあぁぁぁぁあ!!!音楽聞こえないから音量上げるね〜!!!」
最悪!
あろうことか隣人の聞いてはいけない声が、今日に限って最大級のボリューム音だった。
つい、ヤらしい気持ちになり、俺は手で下半身を隠した。
「いいな…僕もしてみたい。ダメ…?英二」
「へ?え…わっ!ちょ!」
「僕…英二にね、今日告白しようと思ったんだ。でも…あんな声聞いて身体が黙らないよね…英二」
信じられないけど不二もまた下半身を押さえていた。
我慢したくない、と俺を床に押し倒す。
それだけで興奮してしまった。
不二に見下ろされるとさらにヤらしい気持ちになる。
BGMには喘ぎ声が続いている。
もう俺の下半身は限界だった。
俺は不二に抱かれた。
…嬉しかったけど、これもまた隣の部屋の人のおかげなのかも?
