※2011年10〜11月拍手小説
※青学オールメンバー
※ややギャグ





部活を引退した後でも彼らの交流は続いていた。
というのもこれからU-17合宿というものが始まるらしく、また他校も含めて顔を揃えることとなる。
その前に一度体が鈍っていないかどうかを確かめるべく、テニス練習をすることになった一同は近隣のテニスコートを借りて打ち合いをした。
学校のテニスコートでもよかった。
だが久々に部員が揃って活動するならばいつでも来られる学校ではなく、別な場所を設けて練習したいと言ったのが菊丸と桃城。
場所を変えることでまた新たなデータが取れると案に乗ったのは乾。
乾先輩がそう言うなら、と申し出たのは海堂。
ちょうど行楽の時季だから外へ行くのもいいなと言ったのは河村。
適当に合わせると言ったのは越前。
いい場所を知っていると言ったのは手塚で、元部長に任せようと仕切っていたのは大石だった。
不二は久々にメンツが揃ったことでテニスができることに歓喜していた。
いや、今回ばかりはテニスが嬉しいということよりもメンバーが揃ったことだ。
不二が怪しい笑みを浮かべていたことに他の部員達は全く気付かなかった。





手塚が紹介したテニスコートのある公園は紅葉を見ることもできたので部員達は喜んでいた。

「これなら弁当でも作ってくればよかったにゃー」
「エージ先輩、ピクニックじゃないんすよー?」
「むっ。そういう桃だって楽しんでるくせに」
「そりゃあこんな綺麗な景色が見れるなら気持ちだってワクワクしますよ!」

相変わらず仲のいいコンビだ。
そこに越前も無理矢理に連れ込まれて行く。
三人が固まって話しているのを眺めていると乾が不二に話しかけてきた。

「不二、嬉しそうだな?」
「うん。ちょっと試したいことがあってね」
「ほう、新しい技でも開発したのか?それは興味深いな」
「ううん、テニスの話じゃないんだ乾」

これを見て、と差し出した不二の手には水筒が握られている。
どうやら自宅から今日のためにドリンクを作って持ってきたらしい。

「僕も乾に頼ってばかりじゃ申し訳ないからさ」
「…何の話だ?」
「やだなぁ、乾にならすぐ理解してもらえると思ったのに」

わからないなら試すのが一番だと言った不二は水筒の中身をカップに移して乾に飲ませた。
そこへ何も知らない河村がやってきた。
乾のものではないことを確認した河村はそれなら安心だと言ってちょうど喉が渇いていたんだと嬉しそうに飲んだのだった。
二人は悶絶する声を発し、ともに不二の目の前で気絶をしたのである。
何事かと手塚が険しい顔でやってくるので不二はすかさず飲み物を勧めたが手塚は受け取らなかった。

「どうして飲んでくれないのさ!僕のお手製のハーブティーだよ?」
「その前にこの二人が気絶している理由を説明しろ!」
「ひどいよ…手塚…ボク一生懸命皆のために作ってきたのに…」

いかにもワザとらしい演技に手塚も溜息をつき、あきれ果てていた。
そこへ菊丸がやってきて不二の頭をぽんぽんと撫でている。
どうやら不二が手塚にいじめられていると勘違いしたらしい。
まさか不二のハーブティーがド級に味が悪いことを知らずに飲んだ菊丸は前者に倣って地面へと倒れたのだった。

「英二…!キミは優しいね…あの世に行っても僕は一生忘れないから!」
「おい!勝手に菊丸を殺すな!」
「…さっきから君はなんなの?文句ばかりじゃない」
「お前という奴は…何人犠牲者を出せば気が済むんだ」
「犠牲者…!ひどいっ…そこまで言う?!僕はこの時季カゼを皆にひいて欲しくないからって持ってきたのに…!」

不二が完全に顔を覆ってしゃがんでしまったのでさすがの手塚もそれ以上は追及できずにいた。
なんとか宥めようと手塚がオロオロするのを待っていたかのように不二はやや口角を上げるとカップを渡してきたのだった。
この確信犯め…!手塚はそう思ったのだがこの状況には終止符を打たねばならぬ。
そして他の部員は手塚が飲めばこの問題は解決するのだと言わんばかりのプレッシャーを無言でかけていた。
元部長としての役割…というのもおかしな話ではあるが、部の統制をするためにもこの残念な役を買って出るしかない。
手塚は仕方なくカップに口を付けた。
完全に飲み干した手塚には何故か他の部員から拍手が送られた。

「手塚元部長!さすが男です!」
「それでこそ…手塚元部長だ…」
「やるじゃん」

後輩らは揃いも揃って他人事のように振る舞うので手塚は眉間に皺を寄せていた。
後ろで胃薬を飲んでいた大石は状況を落ち着かせたことに心ながら手塚に感謝していた。
不二は涙を拭って嬉しそうに語る。

「やっぱり君は尊敬に値するよ。ちなみに乾達が飲んだお茶の10倍濃縮したやつだったんだ、今の」
「ぐ…」

練習時間が大幅に削られたためグラウンド20周!と叫びたかったが手塚には発声するほどの体力はなく、肩を震わしていた。

「うーん、君なら20倍濃縮でもよかったかも?」
「いい加減にしろ…」