部屋の床が見事クリームまみれになったので後始末をした。
手塚も手伝ってくれて簡単に片付けることができたが、軽い労働といえど今度は喉が渇いてしまった。
そこで僕は二人分の飲み物を取りに行った。
しかしここで僕は冷蔵庫の奥に見てはならぬものを見つけてしまった。
これは既にホイップ加工済みの業者製の生クリームだった。
何故こんなところに、しかも失敗を予想していたかのようにちゃっかり用意されていたのだろう?
僕の予想はおそらく姉さんに違いないと考えていた。
姉さんは最後までケーキ作りを諦めたら?と僕にしつこかった。
それできっと用意をしていてくれていたのだろう。
しかし残念ながらこれの出番は完全になくなっていた。
終わってから見つけることになるくらいならしっかり探すべきだったか。
いや、そもそも用意してくれていたのなら一言くらい僕に言ってくれてもよかった。
だが済んだことをグチグチ言っても仕方ない。
ここで僕はふといいことを思いついた。





「手塚!おまたせ」

僕はトレーに二人分の紅茶を持ってきた。
この季節は少し肌寒いのでホットにした。
手塚はコーヒーを好んでいるのを知っていたがあいにく切らしていた。
ことごとく今日は空振りが多い日だ。
だけどこんないいものを見つけてしまったからにはさらに楽しむチャンスがある。
手塚は僕が説明しないトレーに乗った生クリームに目を向ける。
その表情は明らかに不審物を見る目だった。

「不二、もうクリームはいらないぞ」
「うん。知ってるよ」
「じゃあ何故持ってきたんだ?紅茶にでも入れるのか?」
「やだなぁ手塚。そんな野暮なことしないよ」
「ならば何をするんだ」
「水くさいよ手塚…使い方なんてホントは知ってるくせに…」

僕は生クリームを手に乗せると舌でぺろりと舐めた。
手塚は僕の行動に嫌悪感を示していた。
誰が見てもわかりやすい、眉間に皺を寄せて不快感を露わにしている。

「いつからお前はそんな下品な食べ方をするようになったんだ」
「ひどいなぁ、心外だよそんなこと言われるなんて」

僕はさらにクリームをとって手塚の頬につけた。
僕はそのまま押し倒して唇をクリームごと貪った。
時計の音しか響かない静かな部屋で唯一僕らの貪る水音だけが響いている。
手塚は頬を赤らめて子供がするようにイヤイヤと首を動かそうとする。
僕はこのウブな手塚の動きが堪らなく好きだ。
始めは下品だの食べ物を粗末にするななどしつこく言ってきたがここまでくると手塚も僕を受け入れてくれるようになった。
抵抗がなくなったところで僕は手塚のシャツに手をゆっくりと差し入れて肌を壊れ物のように扱いながら撫でた。
滑らかな絹のような触り心地に思わず息を呑む。
ぺとぺととクリームが滑る中、シャツを脱がせば綺麗な肌が輝くように煌めいている。
白っぽくなった部分を舌で伸ばし、さらに肌に擦り込んでいく。

「あ…ふじ…」
「手塚…きもちいい?」

僕の問いには答えてくれず、ひたすら我慢をするように手塚は耐えていた。
声を押し殺すのは彼の得意技でもある。
僕はその声を聞きたいが故に大胆な行動に出た。

「ふじ…っ!!」
「いいじゃない…僕達しかいないんだから」

今日は家族皆帰りが遅いと手塚にも言ってあるのだ。
それなのに何故か周囲を気にしている。
僕は構わず服を中途半端に脱がして熱くなっている手塚の中心部を指でそっと撫でた。

「…っ!!!」
「…いつまで耐えるつもり?ふふっ…我慢比べゲームでもしてるの?」
「…ア…!!」
「その調子だよ…もっと聞かせて?」

僕はゆっくり育っていくそれに緩急をつけながら扱いていく。
早く早くと出たがっていて見ているだけで楽しい。
僕の手は生クリームと先端から溢れている彼のもので白いものだらけになり、にちゃにちゃと音を立てていた。
甘く混ぜられたそれを口にすると手塚はこれでもかというほど抵抗して僕の頭を突き放そうとする。

「お前は…っ…!!なに…しようと…して…!!!」
「いいから」

僕もするのは初めてだし手塚ももちろん初めてだ。
照れの域を超えて羞恥で焦っているのがわかる。
零れ始めたそれを舌先で掬い甘い蜜を見つけた蜂のように僕は離さず吸い始めた。
必死の抵抗をしていた手塚も徐々に力を失い流れに身を任せ始めた。
大きく育つそれを銜えて見上げれば手塚と目が合い、手塚は顔を真っ赤にしている。

「や…っ…やめ……!」
「今やめたら辛いのは手塚だよ」

最後を迎えるのが近い。
はちきれそうなそれは僕の中で弾けて、放たれたものは僕の食道を通りごくりと飲み干した。

「ば…ばかなのか…」
「…随分な言い方をするね。まぁある意味君の言うとおりバカかもね」

僕は我慢ができなくなっていた。
これ以上おあずけなんて食らうわけにはいかない。
僕はベッドに手塚を移してその上に覆い被さった。
見下ろすと手塚はどうしたらいいのかわからない表情で困惑している。
僕は安心させるために微笑んで手塚の唇に口付けた。
優しい甘いキスは滅多にしない。
荒々しいキスなんてしたことすらない。
手塚はチャンスをくれない。
だからいつも我慢を強いられてきた。
だがもう耐える必要はない。
ここは二人だけの空間だ。
そしてお互いのものは激しく反り立っている。
僕も、手塚も、限界なんだ。

「…不二…俺は…」
「なぁに?…怖い?」
「…わからない」
「僕もね、どうなるのかわからないんだよ。でも…君と前進したいと思ってる」

喋りながら僕は手塚の秘所に指で撫でる仕草をした。
そこは熱くなっていたけれどまだきついようだった。
僕はクリームを指に取り、潤滑剤代わりにそこへ押し込んだ。
徐々にそこは滑らかに挿入できるようになり、指を二本入れる。
手塚は苦しそうな表情をしていた。

「ふ…じ…っ…!」
「あともうちょっとだから…」
「あ…あぁ…!!」

三本入るのを確認して次に自分のものをゆっくり押し進めた。
未知の世界に僕も手塚も別世界に飛ばされた感覚で快楽に従順した。
記憶があるのはそこまでで、後は何も覚えていなかった。





「明日はグラウンド20周だ」
「やめてよ、僕はもう引退したのに」
「言い訳は無用だ」
「…手塚はヤだった?僕とするの…嫌だったの?」
「そういうわけでは…」

慌てて手塚は弁明しようとしていたので僕はクスリと笑った。
よかった、本当に嫌がってるはずないことは知っていたけどちゃんと手塚の言葉で聞きたかったのだと不二は言った。
手塚は今もなお顔を赤らめていた。

「これからも手塚のこといっぱい愛してあげるからね」

ほどほどにしてくれ、と消えそうな声で手塚は言った。