※2012年バレンタイン小説です。
俺が目を覚ますと天井にはド派手な装飾のされた大きな鏡が一面広がっていた。
明らかに自分の家ではないことはすぐに理解できた。
しかし今の俺には記憶がない。
何故こんな場所にいるのか。
ここはどこなのか。
ふと起き上がってみると隣にはバスローブ姿の不二がいた。
「おはよう、英二。やっと目が覚めたんだね」
俺の恋人は笑顔でほっとしたように呟いた。
経緯を聞く。
俺がどうして不二とラブホテルにいるのか。
俺が裸で不二がバスローブ姿であるのも理解できなかった。
確か今日はバレンタインだ。
だから不二と遊ぶ約束をしていたのは覚えている。
だがどうしてこんな成り行きになったのか、覚えがない。
記憶障害かと思ったがどうやら俺は事件に巻き込まれそうになったのだと不二は話した。
「ホントに何も覚えてないんだね。…どこから話そうか」
「お前…」
確信犯だったりしないのだろうかと不二を疑った。
いや、だがいくらなんでも付き合っている恋人であるのにわざわざこんな手荒なマネはしないだろう。
シたければシたいと言えばいいのだ。
不二は特別なことがなくても俺を当たり前のように求めてくることは日常茶飯事だ。
だからまさか薬をかがせて気を失ったところをホテルに連れ込んでなどという話ではないことを祈るばかりだが…
「英二…まさか僕が仕組んでラブホに君を連れ込んだ、だなんて考えたりはしてないよね?」
黒い微笑みで俺の方を見ながらニコニコと話してくる。
背筋がぞっとしてしまった。
もちろん俺は首を横に振った。
思っていたことを的中させられてドキリとしてしまったが。
不二は俺の様子を見るとそれならいいけど、とまたいつもの笑顔に戻るも…すぐに凛々しく恐ろしい表情になった。
不二の顔は怖くなっている。
「君はね、暴漢に襲われそうになっていたんだよ」
不二の言葉を聞いて目を見開いてしまった俺。
まさかそんなことがあったなんて…しかも全然記憶になかった。
でもそういえば身体が少し痛かった。
不二が証拠を見せようかと言うのでされるがまま布団を剥ぎ取られると俺の身体には無数の痣が残っている。
そして鏡を見て御覧と不二に言われ、首元を見ればキスマークまであった。
明らかに不二がつけたものではないことは瞬時に理解できた。
「今日のバレンタインデートで…僕と英二は待ち合わせをしていた。僕は交通渋滞に巻き込まれてすぐに辿り着けなかった。これが最大の失態だね。そのせいで君が男どもに連れて行かれるのが目に入ったんだ。すぐに追いかけたから間に合ったけど…本当に危なかったんだよ」
不二は大切なものを扱うかのように俺を抱き締めてくれた。
シャンプーの香りと、不二のいい香りがする。
そんな危ない目に遭っていたなんて…でも逆に記憶が飛んでよかったのかもしれない。
「そういうわけで…その男らを追い払ったまではいいんだけど英二をこのままにしておくわけにはいかなかった。だからとりあえず身を清められる場所と思って選んだのがココなんだよ。シャワーもあるし、ベッドもあるしね」
わくわくしながら不二は虎視眈々と話していく。
しかし俺にはそれでなるほどと納得はできなかった。
本来ならば今日のデートは映画を見て、展望台に登ってみたり、可愛い雑貨屋さんで買い物したり、雑誌に載っていたオシャレなディナーを食べて、それで…と思っていたのだが。
「あぁ、やりたいことがあればあとでもできるでしょ?だ・か・ら」
僕とシようよ…と甘い声で囁き俺は不二に押し倒されていった。
確かにこんな展開も望んではいた。
不二とシたいとも思っていたからそれはそれでいい。
でも…まだ昼間だし!!と訴えようとしたが口は不二との唇で塞がれてしまい、何も抵抗できない。
いつもこうして流されていくばかりだから抵抗しようと思うのに俺の身体は言うことを聞かない。
「いいね…英二っ…そそるよ…」
キスマークを上書きするようにしつこく同じ場所を吸っては痣をつけられていった。
俺は声を漏らすばかりで、しかも腰まで勝手に揺らしてしまう始末。
自分の身体なのに抑制がきかない。
不二のせいだ!とキッと睨みつけるも不二には大したことではないと思われているようで全く意味はなかった。
「あぁんっ、ん、んぅ…!」
「英二ってばこんなにボクに擦りつけて…早く触って欲しいみたいだね?」
自身を握られれば先走りが走り不二の手ごと蜜で汚してしまう。
イヤラシイ身体だ…
だけど気持ちいいのは止まらなくて、不二にしごかれるままに俺は腰を振って自身の開放を求めた。
「あっ、ん、もう…でるっ…!!」
「出していいよ…っ………ん、いっぱい出たね」
嬉しそうな表情で不二は俺の出した白濁を見つめれば舌でべろりと俺の目の前で舐め始めた。
俺に見せつけるのまじでやめろって言ってるのに…こいつはやめない。
恥ずかしくて目をつむると今度は僕の番だよ、と言い出した。
何が不二の番かは言われなくても俺はわかっている。
不二がバスローブをはだけさせれば俺はその下半身にそびえたつ既に立派になっているものに手を伸ばした。
大きい。
俺のなんかよりすごく立派。
これを口に含むときはいつもゴクリと唾を飲んでしまう。
さあ早くと不二にせがまれて頭を押さえられればやや強引に口に含まされてしまう。
喉の奥まで入れられればむせそうになるもそれを一生懸命に舐め回した。
筋に沿って相手の気持ちのいいように舐めれば不二から思わず吐息の漏れる声がする。
俺は調子に乗って舐めながら不二の表情を覗き見るように上目遣いで見た。
「んっ…今日はやけに煽るじゃない…」
「んぅ…ンン…」
不二も調子に乗り始めたのか俺が銜えている状態のまま腰を揺らして中に突き立ててきた。
出したり入れたりされると口の端から不二の蜜が漏れ出してきてうまく飲み込めない。
やや顔を歪めると不二は頭を撫で始めてくれた。
怒張して限界を迎えそうになっている不二の自身は次の一突きで一気に喉まで白濁を飛ばした。
俺は丁寧にそれを飲み込んだ。
「上手になったよね…英二も」
「うんにゃ…不二の教え方が上手いからね」
「僕のおかげ?」
「そーだよっ」
不二は俺を抱き締めたままゴロンとベッドに押し倒す。
ハグしたままごろごろしてるのは本当に気持ちがよくてぎゅうっと不二をずっと抱き締めていたい気持ちになる。
不二がもっとしてもいい?と聞いてきたので俺は迷わず頷いた。
俺の中にはもう既に不二が入っている。
今日はバレンタインということでローションもチョコレートの香りにしたらしい。
おかげで俺の身体はチョコレートの香りしかしない。
不二がグラインドするたびにねっとりとしたチョコのローションが音を立てるので耳を塞ぎたくなってしまう。
「いやらしい音…下のお口は美味しいって…僕をチョコと間違えて食べていくよ?」
「んはぁ、ん、やっ、そん…いわな…っ…ああんっ」
「今日は特別な日だからたっぷりあげようね?」
「だめっ…あ、ああ、ンア、も…むりっ…はっ…アアアアッ!!」
不二と同じリズムで腰を動かし最奥を突かれれば、さっき出したばかりだというのに俺達は同時に白濁を吐き出して絶頂を迎えた。
俺のは腹までつくほどビンビンに反応していて上半身まで撒き散らしてしまっていた。
ふと目が覚めるとまた天井に大きな鏡。
あぁ、あれからずっとホテルで寝ちゃってたんだと俺は一人納得すると自分の身体を見て驚いた。
あれだけ不二と交わったにもかかわらず一切身体が汚れていなかったのだ。
さらにはっとして隣を見れば不二がおり、本来ならば同じく裸であるはずの不二はバスローブを着ているのだ。
腰に鈍痛もあるはずだと思ったが擦っても全く痛みはない。
あんなに激しいことしたのだから何もないはずないのだが…なんだか俺は嫌な予感がしていた。
「もしかして…あれって夢だった、ってことないよな…?」
「おはよう、英二。やっと目が覚めたんだね」
セリフが全く同じなので嫌な予感は的中したのかもしれない。
念のため俺は不二に今の状況を聞いてみた。
「ホントに何も覚えてないんだね。…どこから話そうか」
「お前…」
「英二…まさか僕が仕組んでラブホに君を連れ込んだ、だなんて考えたりはしてないよね?」
「そ、そうじゃねーってば!俺さっきまで…どうしてた?」
「君はね、暴漢に襲われそうになっていたんだよ」
デジャヴとはまさにこのことか、と英二はため息をついた。
どうやら不二との激しい行為は俺の夢の中の出来事だったらしい。
俺がもぞもぞしていると不二は気になったらしく、布団を剥ぎ取った。
「英二…どうしたの、これ。夢精しちゃった?」
「ば、ば、ばか!声に出して言うなー!!」
「本物の僕を隣でほったらかしにしておいて…自分はエッチな夢見てたんだね?ふーん…これはお仕置きだね」
ニヤリと不敵に笑った不二はとても恐ろしく。
勿論俺はこのあと不二にいいようにされるのだった…。