あれから何年が経ったかな?
若干25歳という年齢で不倫騒動を起こし、刃物で刺されるなんて事件が起きてしまったわけだけど、この事件がきっかけで僕と英二は今、一緒に暮らせているわけだ。
腹部に傷跡は残ってしまったけど、英二を手に入れた証だと思えばいい。

僕は英二の作ってくれたもやし炒めを口に入れた。






「引っ越し代かかっちゃったのが大きかったな〜…ごめんねぇ、こんなのしかなくて」

「おかずがあるだけいいよ、メシ抜きの方がもっときつかったからね」

「でももう少しすれば給料もちょっと増えるから!そしたら卵料理振る舞えるし!!」

「バイトまた増やすの?」

「う…」

「言ったよね、バイトは昼と夜の二つだけって。これ以上増やしたら寝る時間ないじゃない。ダメダメ!」

「むぅ…不二に喜んでもらおうとしたのにぃ」






すぐ無理をするんだから…。
確かに僕達はひどくお金に困っていた。
ただでさえ金がないのに引っ越し代に消えたのは痛かった。
でもあの場所からは離れたかった。
しばらくすれば英二の元妻が戻ってくるだろうし、嫌な思い出の方が多いんだ。






「あ、もうこんな時間!早くしないと遅刻する〜」

「英二!急いで!」






僕らに暇な時間などない。
二人ですぐ支度をした。
これから昼間のバイトに行かなくては。



バイト先は二人とも同じではないけど、わりと近辺ではある。
またあとで、と英二に手を振り、僕は職場に向かった。













「ギリギリセーフ。…おい不二、遅刻したら店長カンカンに怒るぞ。次は気を付けろよ」

「は、はい…すいません」

「まぁいいけどよ。…そういや知ってるか?日本代表の越前リョーマが予選通過したってな。テニス界のプリンスだとよ。あいつお前の後輩なんだろ?」

「えぇ、まぁ。すごいや…越前は」






住む世界が違うってこと。
羨ましいとも思ったけど僕は今の暮らしには満足している。


僕は昼間コンビニのバイトをしてから、夕方居酒屋のバイトをしている。
断然夜の方が時給はいいけど思ったよりはもらえない。
生活費を捻出するだけでギリギリだ。

英二は昼間ファーストフードでバイトをしてから、夕方ネットカフェでバイトをしている。
不安定だけどわずかながらに貯金はしていきたい。
そうしたらデートにだって行ける。
今は金のかからないデートしかしていないから、いつか行楽地なり旅行なり行きたい。















「ふぇ…疲れたぁ」

「僕も…。やっぱ二つ掛け持ちはきついや」

「今から寝れば6時間は寝れるよ!よし、寝よう!!」






最近は働いて寝て、の繰り返し。
夜の営みだってほとんどない。
でも疲れてるのに無理したって仕方ないんだ。
僕はおやすみ、とだけ言って眠りについた。


僕らが安定して暮らせる日はまだ遠い。
いや、もしかしたら永遠に来ないかもしれない。
でも僕は英二と一緒ならどんな苦難だって乗り越えたい。
どんな未来が待っているかわからないけれど、僕は英二との時間を大切にしようと思った。