入社してまだ数ヶ月。
スーツがまだ体になじんでいない様子の新入社員は、社会人になっても髪のセッ トには時間をかけていた。


念願の一人暮らしで心が踊る。
炊事、洗濯などの家事は自分でやらなくてはいけないが、それを引き替えにして も一人暮らしがしたかったらしい。

そしてもっといいのは…







「おはよう英二!」

「おはよ〜」







同じ会社に行くことになった不二。
つまり同級生から同僚になったのだ。
それが嬉しくて嬉しくて英二はたまらなかった。







「まさか英二と同じ所に受かるなんてね」

「不二って一発で内定もらえたんでしょ?いいよな〜俺なんてここ10社目だった のに」







不安だった新生活も不二がいるので安心したらしい。
住んでいる家も近いので本当に運がいいと英二は思っていた。























昼十二時過ぎ。
昼休みになったが英二は弁当を忘れていた。
仕方なく近くのコンビニで買ったカップ麺を食べていた。
そこに不二がやってきた。







「あれ?弁当じゃないんだ」

「忘れててさ〜。だから今日は味噌らーめん」







一つでは足りなかったようだが、また買いに行くのも面倒らしく買いに行くのは諦め、英二は我慢した 。
代わりにスープを全部飲んだ。
体に悪いとわかっていたけれど腹を膨らませるにはちょうどいい。








「ごちそうさま〜」

「英二、足りたの?」

「足りたことにすんの!だぁってもう買いに行くの面倒だし」







英二は食べ終わったカップ麺の容器をゴミ箱へ入れた。
また仕事に戻るらしい。

















「疲れた…あ、お疲れ様でした〜」







もはや頭もしっかり動いていない。
疲れて思考がストップしている。
もう今日は帰った方がいいと感じた英二は真っ直ぐ家へと帰った。

不二は残業のため一緒に帰ることができなかった。
















「ただいま〜…なんて誰もいないのに言ってもしょうがないよね」







RuRuRu…

RuRuRu…








帰ったと同時に電話が鳴る。
びっくりしたけれど電話を取った。







「もしもし」







非通知であったため、電話は取るべきではなかったと英二は後悔した。

しかし何の用件で電話をしてきたのかわからない。
終始無言だった。

気味が悪いので電話を切ろうとすると向こうがガチャリと先に切った。
不愉快な思いをした英二だったが、またもやすぐに電話がかかってきては無言であ ったため、英二は怒鳴り散らした。







「お前何回電話かけりゃ気が済むんだよ!」

「…ブツ!」







また切られてしまった。
英二はさすがに怒りに満ちてこのイライラに我慢ならなかった。
































「ってことがあってさ〜」







英二は昨日の出来事を話した。
気持ちの悪い嫌がらせかか何かだろうと不二は言った。







「もしかしたら電話番号変えた方がいいかもしれないね」

「うん…」







まだこれは序章の始まりに過ぎなかった。