「ねぇ…もうやめよう、いつまでこうしているつもり?」

「ずっと…ずっとこのままがいいから…不二は一緒にいて」






夢でまた会えた可愛い英二の頼みだから。
だから僕は夢の中の英二と少しでも長くいたくて、英二のワガママを聞いてあげていた。
英二のためなら何でもしてあげたいと冗談抜きで考えていた。

でも夢の中の彼は一方的だった。
僕はこうして英二のアパートから3日間出られない夢を見ている。






こうした夢を見るようになったのは、飲みの約束をした日のことがあってからだった。
店の飲みは高いからと宅飲みしようと話していた。
お互い社会人になって都合が合わない中、調整してやっと合わせた。

英二は綺麗になった。
一段と細くなって腰と首筋が女のようだった。いや、それ以上だ。
僕は食事中も飲んでいる間もずっと英二に見惚れていた。

彼が僕のものになったらどんなにいいだろう。
間違いでもいい。
後で悔やんでもいいから、とそっと英二に触れた。

僕も英二も酔いは覚めていない。
流されるように英二は僕に抱かれた。













目が覚めると僕は自分のアパートにいた。
頭がズキズキと痛い。
二日酔いか。
それにしてもどうやって帰宅したのだろう。
何も記憶がなかった。
思いだそうとするとかえって頭が痛くなるからこれ以上は何も考えないことにした。

会社に行かなきゃいけないのに体がだるい。
飲み過ぎたみたいだから次回からは少し控えよう。
フラフラしながら僕は電車に乗る。

今日はやけに空いている。
珍しくシートは空席だらけだったので僕は倒れ込むように座った。






はっとして目を開けると目の前に英二がいた。
ここは何処だろうと辺りを見渡す。
英二のアパートだ。
そして僕はベッドに寝かされている。
あぁ…僕はあまりにも英二を好き過ぎて、飲みのときの記憶を辿り、夢を見てしまっているのか。

麗しき僕の友人が僕を見て微笑んでいる。
早く恋人にしてしまいたい。
形じゃなくてもいい。
世間一般で言うデートだの旅行だのしなくていいから、英二の側にいられるのならばなんでもいいから、ずっとこうしていたいと思った。

楽しい夢だ。
英二は僕の上に乗っかって激しく悶えながら腰を振っていた。
美しいその姿を永遠に目に焼き付けたくて、目を瞑らずにずっと英二を見ていた。

なんて気持ちよさそうにしているのだろう。
僕は体勢を逆にして英二を攻め続けた。













ふと目が覚める。
僕は電車のシートに横になり、車掌さんに肩を揺すられていた。
僕はシートを一人独占して、終点まで眠っていたのだ。

きっとあまりにもいい夢を見ていたからだろう。
目が覚めることがなかったのも仕方がない。

夜になってしまって終電がないのでタクシーで帰ることにした。
タクシーの中は適温でゆったり出来た。
居心地の良さに再び瞼が重くなる。
しかし今日一日僕は眠ってばかりではないか。
一体何をしているんだろう。
自分の生活がなっていないことに気付いた僕は、自分に呆れながらも重たい瞼に逆らえず再び眠りについた。