ふと気が付けば、また英二のアパート。
見慣れた風景に違和感すらなくなったこの感じは、僕が眠りにつく度に現れる世界。
素敵な世界だけれど所詮夢に過ぎない。

こうして英二はまた僕の目の前に現れて妖艶な笑みを溢し、不適に笑う姿が僕を惑わしてしまう。

…身体が以前よりだるいと感じた。
気のせいか。
夢の中でも疲労感や倦怠感はあるのだと気付く。

英二に触れる。
リアルな感触に僕は再び下半身が疼く。
いつか機能しなくなる日も近い気がする。
このままじゃダメになる。
既に会社に通勤すら出来ていない僕はダメ人間なことはわかっている。
だけれどもっとダメになってしまう。

宝を目の前にし僕はその宝を突き放した。
精一杯の拒絶だった。






「ねぇ…もうやめよう、いつまでこうしているつもり?」

「ずっと…ずっとこのままがいいから…不二は一緒にいて」






夢を選ぶことは人間不可能に近い。
稀に、自分の見たい夢をコントロールして見ることが出来てしまう人もいるらしい。
だが僕はその類いではない。
だから僕が何を言おうが、考えようが、英二が出てくる夢を見ずに済むとは思えない。
しかし訴えれば何かが変わるかもしれない。
僅かな望みで僕は否定をした。

英二をどんなに愛していようが、この夢を見ると身体がついていかなくなりそうだ。
いつか自分が自分でなくなってしまうようだった。






「どうして逃げるの?ねぇ…俺、不二が好きなのに…一緒にいてくれないの?」

「一緒にいたいよ、僕は英二が大好きだ。だからこそ、いつまでもこうしないで…話をしたり、遊んだり…とにかく違うことがしたいんだ。身体が疲れたんだよ」

「不二は体力あるじゃん…俺よりずっと。こういうときこそ不二はなかなか疲れなかったよ?ねぇ、もっとしよ?」






何故これ程英二は求めるのだろう、僕だって確かに英二を欲しいと思っている。
自分だけの所有物にしたい、と。
でもこの夢だけで一体何度見たというのか。
さすがの僕も限界を感じた。

しかし僕の言葉は結局届かず、英二の思うままにされた。
何故同じ夢しか見ないのだろう。






同時に果てる。
意識は失っていない。
まだ夢を見ているみたいだ。
英二は僕の隣ですやすやと眠っている。

居心地のいい空間。
確かにずっとこうしていたいと思ってはいたけれど。
僕はもう呼吸することでさえ、疲れ果てている。
夢は続いて欲しいと思いつつ、現実に一度戻りたいとも思っていた。