自分の体は横たわっている。
雨に濡れた地面。
固いコンクリートの地面。
目先には雑草が少しと小石と泥が少し。
ここは何…

空き地のような、よくわからない場所。
理解するにも疲れて目を長く開けていられない。
つらい…

立ち上がることは困難だったので見渡せる限り見渡してみたけれど、記憶にない場所だ。

僕は何をしていたのかわからない。
とりあえず会社に行って、でも寝過ごしてしまって会社には行かなかった。
夜で終電だったから仕方なくタクシーを使った。
そこでまた眠ったんだ。


…?
何かがおかしい。
僕は会社に行くために朝、電車に乗ったんだ。
でも寝過ごしたから会社には遅刻するかもしれないけれど、行くことは出来たはずだ。
それなのに何故もう夜になって終電なのだろう…?

時間がおかしい。

そして今置かれている僕の状況もおかしい。
何もないこの空き地に何故僕は横たわっているのだろうか。

…答えは一つだ。
今こうしているのは






僕が見ている夢の中だからだ。





















僕はハッとした。
また英二のアパートにいる。
こちらが夢だと勘違いしていたんだ。
夢なんかじゃなかった。
現実は…こっちの世界だったんだ。






「不二…おはよう」

「英二…」

「ね、もっとしよ?」

「…駄目だ」






僕は英二を突き飛ばした。
壁に飾られたカレンダーを見る。
×で消された日は17日まで。
18日からは×が付いていない。
僕達がこの部屋で飲みをしたのは11日だ。
まさか…1週間もこの部屋に居続けたってことなのか!?

考えただけで背筋が寒くなる。
僕は…






「不二…一生ココに閉じ込めてあげる」

「なにいって…」

「だって不二は俺のものだもん。他の人となんて触れる必要ないじゃん」

「違う…違うよ英二!こんなの…こんなの夢なんだ!!」

「何度言えばわかるの?これが現実。俺は不二を酔わせた後もずっと酒を呑ませてた…そうすれば不二は意識朦朧になるから俺のやりたい放題ってわけ」






僕に酒を呑ませて意識朦朧だって…!?
そんな…だからあんなに意識が飛んでしまったのか。
何にしても僕はこの場から立ち去らなくては。
可愛らしくて大好きだった英二も、今となっては恐怖の対象に過ぎない。
英二が怖い。
今までにはなかった感情だ。

僕は立ち上がり、ドアへ向かおうとする。
しかし自分が全裸だったことに気付き、布団から出られない。
僕の服があったはずなのに見つからない。
英二は不適な笑みで僕を見ていた。






「服がないじゃないか…英二!服を出せ!」

「そんなものもうないよ。引き裂いちゃったからゴミ箱に捨てた」

「引き裂い…っ!?勝手に捨てたのか!?」






僕は英二の胸ぐらを掴み、壁に押し付けた。
こんな緊迫した状況でも英二は笑っていたので睨み返す。






「服を出せ…僕は帰る」

「帰らせない。だから服だって貸さない」

「…英二、こんなのないだろ?一緒にまた飲む機会なんかいくらでもある…」

「俺はずっと不二と一緒にいたいの…だからもう離さない。離れない」

「痛っ…英二っ!?」

「疲れたらまた眠っていいから。ずっと一緒にいようね」






僕よりも力はないと思っていたのに意外に力が強かった。
思い切り拒絶することも出来たかもしれない。
だけれど英二に対してそれはしたくなかった。
英二だから。
好きだから。

抵抗はせずにまた流される。

次に目が覚める時は何日後だろう…。