12月に入ったら大きなツリーの点灯式が始まった。
地球温暖化とか騒がれてても眩しく照らされているライト。
人間やっぱ環境のことよりも好きなことに没頭する方がいいみたいだね。

こういうこと言うと周りから冷めてる、とかつまんねぇこと言うな、とか言われるけど…俺は正論だと思う。
ツリーは確かに綺麗だけど…俺的にはどうでもいいわけで。
クリスマスだからって緑や赤とか使いすぎ。
皆同じ色に染まっていく光景がうっとおしく感じる。

そんな中で主催者は何を考えたか、クリスマスイヴに青春学園中等部硬式テニス部同窓会とか言う、長ったらしい名前を付けた会を開くらしい。
しかも参加者は青学が全国優勝をした年の部員だけ、という贔屓な匂いをプンプンさせている。

誰が企画者かなんて名簿を見なくてもわかる。
…やっぱりこの人だよ。
だったら部長がやればいいのに、と思ってもあの性格だから企画するわけない。
それは俺だってわかってる。
でも何もイヴの日にやらなくても…と俺は思う。
残念ながら俺はいないけど、この年齢になれば皆彼女の一人や二人はいるんじゃないの?
同窓会なんかに来てる場合じゃないでしょ。
俺の予想はおそらく、皆個人的都合で不参加。って形になると思う。

不二先輩も何考えてんだか。






暫くしてからメールが来た。
アドレスを変えていなかった俺は連絡が簡単についていいらしい。
内容は…主人公がいなきゃ意味がないから高熱出しても絶対来るように!だって。
いやいや、今の時期に高熱出したらインフルエンザでしょ。
出ちゃ駄目だって。
それでも来いなんて鬼だな、この人。

大体主人公だなんて言ってるけど、こんな俺みたいにテンション低い奴が主人公なわけないじゃん。
優勝だって俺一人で決めたんじゃなくて、青学皆のおかげ。
積み重ねて頑張ったから優勝出来たんだってこと。
それでいて俺だけが主人公なのはおかしい。

俺はメールを返信した。
すると不二先輩から着信が。

今度は電話が掛かってきた。






『あ、もしもし?久しぶりだね、越前。メールだと時間がかかると思って電話しちゃったよ。今時間大丈夫?』

「はぁ…一応」

『相変わらず冷めてるね、君らしくていいけど。それでね、なんだかメールの内容を見るに越前はあまり気乗りしていないみたいだから予め連絡をしようと思って電話したんだ。越前が心配しなくても、皆予定は空いてるから大丈夫だよ。それと主催者は僕だけど副主催者は英二だから、もし僕に連絡がつかなかったら英二に連絡してね。それから越前がいなきゃ意味ないから絶対来てね。今、日本にいるんだろ?手塚もドイツから帰ってきているんだ。皆に会えるのが楽しみだねって英二と話していたんだよ』






一度にどっさり説明されて俺はただ“はぁ”とか“うーん”とかしか言えなかった。
何をそんなに楽しみにしているんだか。

実は容易に想像はつく。
この人達は青学レギュラー9人で集まるのが大好きだった。
だからメンバーの誕生日があっては誕生日会なんて子供染みたことを成人してからも行い続けてきたわけだ。
だけどそれ関連のイベントには一切参加しなかった。
と言うか出来なかった。
俺が海外で活動していたから。
皆も納得した…かどうかはわからない。
それでもドイツにいた手塚部長は度々日本に戻っては不二先輩達と会っていたらしいから。

だから…本来俺だって忙しいながらも時間を作ろうと思えば出来るはずだった。
でも行かなかったのは冷めてるから、じゃなくて、会わす顔がなかったから。

声を掛けてくれてたのに無視し続けていたんだから俺は嫌な奴って思われて当然。
桃先輩が“あいつは感情表現が下手”と言っていたみたいだけどまさにその通りなんだと思う。

だって…なんて返せばいいかわからないから…。






『…ん……ぜん、…越前!』

「あ…すいません」

『はぁ…とにかく絶対来るんだよ!いいね!?』

「…うぃーっす」






行く気…なかったけど、ここまで言われたら仕方ない。
カレンダーの24日に赤マジックで丸を付け、小さな文字で同窓会と書いた。