※彼らは大学生になっている設定です。
※不二には苦い思い出があります。
※不二はチェリーじゃありません。
※苦手な方はバックして戻って下さいね。
乾から聞いた情報を頼りに英二はある場所に向かった。
そこは成人していても大学生という肩書きがあるならば入ってはいけない…いや、人目を気にしない者でなければ立ち入るのに勇気が要るような場所だった。
情報を手に入れたのは一週間前の話だった。
久々の中学の同窓会ついでに部活動の同窓会もあり参加をした英二は乾と会った。
そこはかつての仲間が集ってはいたが、海外進出をしてプロになった手塚や越前の姿はなく、また不参加の者も多くいたので実際話ができるのは乾だけだった。
このような行事に桃城が参加していなかったことに驚きながらも英二は席に着き、乾と一緒に酒をかわしていた。
「英二…面白くなさそうな顔をしているな」
「そうじゃないけど…でもレギュラーの皆がいなくて俺は寂しいって思ったよ」
「そうだな。不参加者が今回は多いからな」
河村は自営業の仕事で忙しく来れずにいたし、海堂は怪我のためにこちらに足を運ぶことはできなかった。
桃城は資格取得の試験日と重なってしまい不参加だし、医者のたまごの大石は多忙で不参加となっている。
そして不二は…。
「乾は知ってるんでしょ?不二が今どうしてるか」
「あぁ、一応な。だけど本人から口止めされている」
「…俺にも言えないことなんだ?」
「うむ…お前には話してもいいような気がするんだがな」
乾は暫しグラスを傾け、酒が残っていないことを確認するとオーダーをした。
会話を断ち切るのに上手いと思いつつ、肝心なことを話さないのはフェアではないと感じた英二は乾が話を逸らす前に質問した。
「不二は隠してるんだろ、今の状況」
「知られたくない、と言っていたな」
「理由は?」
「自分のことを知っている人が聞いたらもう口を聞いてもらえないかもしれない、そんなことになりたくないから誰にも話したくない、だってさ」
乾が注文した酒は大学生にしては渋い。
熱燗なんか飲んでるなよ、と突っ込みを入れたい気持ちだったが不二のことが気になって仕方ない英二は自分の手元にあったグラスの梅酒を一口だけ飲んで乾に話しかける。
もう呂律が回らないあたりこれ以上酒を飲むのは止した方がよさそうだった。
「電話してもメールしても何も返ひてくれにゃいんだよ…」
「だろうな。あいつは直接会わないと何も語らない。直接会っても話してくれるかどうか疑問だな。俺でさえ、もう何ヶ月も話していないし…って大丈夫なのか英二、お前飲みすぎだ」
「うるひゃいなぁ…ヒック…俺なんか高校卒業してからじゅっとだよ」
「そう…だったな」
乾の方が優越であるような気がしてならない英二は乾の腕をガシッと掴み顔を近付けて脅した。
英二の顔は真っ赤になっており言葉もところどころおかしいので脅威に感じない。
「おせえて、ふじのいるとこ!」
「おい、英二。大声出すな」
「にゃんで俺のことむしするんだよふじは〜!ひどいにゃ…」
その後の記憶は曖昧だ。
英二はベットに眠っており、明らかに自分の家でないことに気付くとコップ一杯の水が置かれていた。
そこは以前皆で宅飲みをした際の会場にもなった部屋だった。
頭がガンガン痛み出して辛い。
「オハヨ…」
「やっと目が覚めたか。あの後お前大変だったんだぞ」
「う…ごめん」
「何をやらかしたか聞かないのか?」
「遠慮しとく…」
大抵記憶がなくなるまで飲み潰れた日は人に語れないほど恥ずかしいことをしているのは過去に経験済みだった。
なのであえて聞く必要がなかった。
ごめんと謝り乾の方を見たが乾は全く気にしていない様子だった。
「乾の部屋…落ち着くね」
「本気で言ってるのか?」
「…嘘」
「だろうな」
壁に走り書きされて一部黒くなっているので落ち着くとはお世辞にも言えない。
また謎の記号やらたくさん溢れており、見ているだけでさらに頭が痛くなる。
とりあえず水を飲んでふと体勢を戻そうとしたとき、この部屋には似つかわしくないものが置かれていることに気付いた。
香水。
乾は香水なんて付けていただろうか?
もしかしたら乾の彼女のものかもしれない。
しかしその香水は女性用には見えなかった。
考えられるのは乾のもの…としか思えないけれどその香水は乾のものではない気がした。
「乾って香水付けてたっけ?」
「…いや」
「彼女できた?」
「いや」
「じゃあ…これ誰の?」
一呼吸置いて不二のものだと乾は答えた。
その回答に英二は何故か合点がいった。
聞かずとも不二のものだと想像ができたのだ。
「不二…この部屋に来たことあるんだ」
「あぁ」
「どうしたら…会えるの?」
不二が表に出られない理由がなんとなくわかったような気がした。
英二は電話番号と場所を乾に教えてもらうと早々に乾のアパートを後にした。
英二は震えていた。
夜にあちこち遊び回ったことは数多くあったが、大学生という立場でこの類いの店に入ったことは未だかつてない。
しかも一人で来るなどそんな客も珍しいのかもしれない。
いや、むしろ一人で来る客の方が多いのかもしれない。
初めてなので仕様がわからない。
せめて乾と同伴で来るべきだったかと思い、先ほど電話をしたのだがあっさり断られてしまった。
あくまでも乾は不二との約束は守りたいらしい。
だからこそ英二はたまたま入ってしまった客と装い(かなり無理があると思うが)、偶然不二に出会ってしまうという設定で行くことにした。
店に入り暫くしてから部屋に通される。
その部屋で待ち構えていたのは紛れもなく不二だった。
「いらっしゃいま──…えい、じ?」
「不二…」
二人とも固まったが真実を受け入れる覚悟はあるんだと自覚した英二は部屋の扉をガチャンとゆっくり閉めた。
