英二の奥まで到達すると不二は休む暇なく打ち付けていく。
英二にはもう快感しかなかった。
それと同時にこの時が止まって欲しいとさえ思った。
今不二と身体が繋がっていることに英二は喜びを感じていた。
律動により中は熱くなると同時に少しずつ何かが注ぎ込まれていくのがわかる。
本来受け入れるべきでない場所なのに不二を離したがらないのかぎゅうぎゅうと締め付けていく。
余裕があったはずの不二もこの刺激によって吐息を漏らした。

「あぁ…英二の中…狭くて熱くて…きもちいい…」
「ふ…じぃ……」
「あ…もう…でる……っ」

英二の中で不二は達し、中に熱いものが注ぎ込まれた。
引き抜く際にコプリと音がしてさらにトロトロと白濁した液体が流れ出る。
それを見て英二はこれが最後になって欲しくないと思った。





英二は帰宅をした。
しかし自分の家ではない。
あの後腰の痛みが押さえられなくなった英二と一緒に不二は自宅のアパートへ向かった。
自宅で休ませようと思い不二はベッドに英二を横たわらせた。
ゆっくりとしたリズムで寝息を立てている英二はどうやら眠ってしまっているらしい。
不二はその様子を見て微笑むとスーツを脱ぎシャワー室へ向かった。
不二が部屋に戻ってくると英二は目を覚ましていた。
その表情からは恥ずかしがっているのかそれとも怒っているのかよくわからない表情であった。

「英二も浴びておいでよ」

声をかけたが返事はなかった。
下を俯くのでなおさら英二がどう思っているのかわからない。
しかし先ほどの行為だってどちらも意地を張っていたからきっと後悔はしているのだろう。
だがそれならば最初から抵抗してやめるべきだったのだ。
煽った英二が悪い。
不二はそう思うようにしていたが、実際英二を身体を重ねることはすごく良かった。
誰とやるときよりも気持ち良かったし、乾としたときよりも快感だった。
しかしそう思っているのは自分だけなのだろうし、英二には罵倒されるにちがいないと思っていた。

「英二…ごめ──」
「謝るなよ」
「え…?」
「お前さ…本当に何もわかってないよな。いい加減その澄ました顔すんのやめろよ」
「どういう意味だい?」

またしても口喧嘩をすることになるのか。
もう英二と言い争うのも嫌になってきた。
だが英二は会話をやめずに話し続けてくる。

「俺…あんなことしておいて謝られたら腹立つ。だからあやまんな」
「…だって泣くほど嫌がってたじゃない」
「あれは…!!ただ…その…勝手に涙が出ただけで…本気で泣いたわけじゃないし…それに」
「…それに?」
「俺…不二の言うとおり…初めてだったから…相手が不二でよかった」

最後の方は小声になっていたのでなんとなくでしか聞き取れなかったが、英二が後悔していなかったことに驚いた。
英二の首筋にはまだ紅く腫れ上がった痣が痛々しげに残っている。
不二はそっと英二に近付いて隣のスペースに座る。
身を寄せて英二にさらに近付いてキスをした。
以前のような噛みつくキスではなく、甘くしっとりした優しいキスに今度は英二が戸惑いを覚えた。
さらに不二が抱き寄せたので英二も身を任せて不二に抱かれた。
ゆっくり押し倒されて反転し天井と不二を見上げる形になる。
不二は化粧も落としていてさっきとは比べ物にならないくらいさっぱりした優しい顔をしていた。

「ふじ…」
「英二、今こんなことを言うのは君に呆れられるかもしれない。でも言わせて」
「なに…?」
「僕は君が好きだ…好きで仕方なかったんだ」

突然の告白に困惑する英二。
憎かったのではないのだろうか?
散々馬鹿にしていたのにこの変わり様に英二は次の言葉が見出せない。

「僕は君に触れるのも…かかわるのも怖かった。だから連絡もせずに蒸発しようと思った。そのとき乾から連絡があった」
「乾が…?」
「そう…英二がお前のこと気にしてるってね。最初は放っておいてくれと言った。こんな姿の自分を見られたくなかったから」
「じゃあなんで…なんでこんな仕事してたのさ…金に困ってたわけじゃないんだろ」

なんでだか僕にもわからない、と不二は言った。
わからないはずはないだろと英二が追及して初めて不二は過去を語り始めた。
不二は大学入学してから恋人ができたそうだ。
だが実際はただの遊びで困ったときだけ不二を頼り、普段は全く一緒に遊んだりすることもなかったという。

「自分に自信がなくなったんだ…こんな自分は誰にも必要とされてないと…そう思った」
「バカなこと言うなよ…俺が…俺がどんなに不二のこと心配してたかわかってんの?!」

英二は声を大にして言い放った。
今にも泣きそうな顔をしている。
英二の体は震え、不二を抱き締めると声も震わせて言った。
英二の顔が当たっている部分が湿りだしている。

「俺は不二のこと…ずっと考えてたんだかんな!!」
「うん…」
「ボロボロになる前になんで俺に相談しなかったんだよ!!」
「そうだね…」

不二は英二を温かく包みこむように抱き締める。
こんなに近くに自分を思ってくれている人物がいたというのに何故気付かなかったのだろう。
ヤケになっていたせいもあったのかもしれない。
でも一番は迷惑をかけたくなかったからだ。
そう不二が言うとバカヤロウと英二に叱られた。

「俺…不二が好きだよ…だから俺に頼ってよ…」
「うん…そうする」
「そんな人でなしのろくでなしは早く忘れてよ…」
「わかった…」

英二と不二は再びキスをした。
まだやり直すことなんていくらでもできる。
時間はまだたっぷりあるのだ。
英二は不二に微笑むと不二も同じように微笑んだ。
痛くない?と聞くと少しだけと英二は答えた。

「今度は優しくしてね」
「…了解」

二人の夜はこれから始まる。