隣の部屋は明るく、しかしながら穏やかな灯りで温かみのある部屋だった。
不二はドアを開け入室するよう促した。
不二は英二に苛立っていた。
さも不二のことを知っているかのように振る舞う姿が憎かった。
以前の英二の姿はもっと情けなくて人に甘えたような性格だったというのに、今の姿は挑戦的な目付きをしていて気に入らない。
強気でいられるのも今のうちだ──
そう思った不二は部屋に入るなりベッドには行かずすぐさま英二を床の上で押し倒した。
さすがにいきなり押し倒したので英二も驚いたようで目を開ききっている。
これは面白い。
思う存分からかってやろう、と不二は無理矢理に英二の服を引き裂いた。
「…!!」
「どう?英二…こういうの好き?それともびっくりしちゃったかなぁ?」
見下すような視線に英二はギッと睨み付け平然を装った。
服を裂いた隙間から見えた英二の肌に不二は胸を高鳴らせた。
絹のようなすべすべした肌に見惚れ、不二は指で優しく撫でる。
思わず不二は高校の時に体育の着替えで見た英二の肌を思い出していた。
あのときとちっとも変わらない綺麗な肌。
英二は不二が扱うには眩しい存在だった。
だけど自分は──
「へっ…怖気づいてやんの」
「なんだって…?」
「不二ってば…やっぱ怖いんじゃん。俺とヤるの」
何も知らないくせに。
ぬけぬけと喋る英二が許せず怒りの頂点に達した不二は中途半端に脱げかけていた英二の衣類を全て取り去った。
力任せにやったのは不二も初めてだったので、衣服はビリビリに裂けただけでなく英二の肌に爪が当たり傷が付いていた。
「いた…っ」
「これ以上挑発するともっと痛い目に遭うよ…?煽るのやめたら?童貞のくせに」
「てめっ…!!」
英二は本気で怒りを覚えた。
挑発しているのはむしろ不二の方じゃないかと英二は訴えたかったが、次々と剥がされていくので言葉を発することができない。
あっという間に下も脱がされ、ボロボロになった布だけを纏う姿となり羞恥心でいっぱいだった。
だがここで白旗など挙げることはできない。
挑発されて頭にきているのにここで泣いたりしたら相手の思うツボだ。
英二は涙が出そうになるのをぐっとこらえて不二のされるがまま我慢していた。
唇を重ね舌を無理矢理に挿れられ呼吸ができなくなり苦しい。
不二の舌は意志を持って勝手に身動きしているようで、ありとあらゆる場所を這いずるので呼吸困難になりそうになる。
英二の苦しそうな表情を見て不二は喜び、僕に勝つのはまだ早いよ──と昔よく言っていたセリフを吐いてさらに下降していった。
胸の突起は誰も食べたことのないフルーツのようになっていて、不二は我一番といわんばかりに強く吸った。
経験したことのない刺激に脳内の思考が乱れた英二は熱くて甘い吐息を漏らした。
「あっ…ンぁ…っ!!」
「気持ちいいでしょ…?ふふっ!」
「ヤ…やだ…ァ…ァン…!!」
英二は涙目になり視界もぼやけていた。
こんな姿を不二の前で晒すことになろうとは予期もしなかった。
そして不思議なことに煙草のニコチンの匂いを漂わせている不二にだんだん慣れてきている自分がいる。
どんなに煙草を吸おうが不二の髪はさらさらで綺麗だし、不二の吐息も熱くて気持ちがよかった。
このまま不二を取り込みたいとさえ思った。
「やだなぁ…英二ってば…もうこんなに垂れ流して」
英二の欲望は誰が見てもわかりやすい姿をしており、既に先走りが漏れている。
両足で見えないように隠そうとするが簡単に足を抑え込まれて開かせられてしまう。
部屋は決して暗くはないので丸見えにされているのが英二には耐えられなかった。
もう限界に近付いていたその欲望に不二はしゃぶりつく。
経験したことのない感覚に英二は意識が真っ白に飛んだ。
「気絶なんて…させないよ」
バシッと英二の頬を引っ叩いた不二。
頬は赤く腫れ、英二は涙目になっていた。
「いや…っ…やめ…」
「さっきの威勢はどこに行ったの?まさかこれで降参だなんて言わないよね」
不二は再び英二の己をくわえて慣れた手付きで英二の興奮を高まらせた。
自分の手でしか触ったことのないそこは不二によって成長させられ、限界を超えたときは不二の口の中にぶちまけてしまった。
自分のしたことに戸惑いを隠せない英二はどうしたらいいのかわからず顔を背けている。
だがこれでもう終わったのだから解放されるだろうと英二は立ち上がろうとしたとき、不二に再び手首を掴まれて身動きできなくされた。
「な…なんだよ…もういいだろっ」
「英二…まさかこれでおしまいだと思ってるの?」
「おま…なにいって…」
「君だけ気持ちよくなってどうするのさ」
不二は達したばかりのそこを掴み力を入れる。
強すぎる刺激に英二は痛みを訴えた。
だが不二は力を弱めようとはしない。
不能にされそうな予感がして英二は不二を突き飛ばした。
「てめ…何すんだよ?!」
「壊す」
「は…?」
「キミの全て…ボクにちょうだい?全部綺麗に壊してあげるよ」
英二はベッドに繋がれていた。
こんな道具はおそらく一般の部屋にはお目にかかれないものだろうと推測できた。
英二だって映像でしか見たことはない。
そもそも扱う機会だってないのだから当然だった。
不思議と怖くはなかった。
きっと相手が不二だったからだろう。
今思うと英二は不二にこんな行為をして欲しかったという願望があったのかもしれない。
乾と香水について話していたとき、心の中で羨ましいと思ったのは事実だった。
そしてそのようなパートナーとして乾が選ばれていたことを恨んでいた。
どうして自分じゃないのだろうと悲しくなった。
だが今こうして不二に抱かれていることで英二は心地がよかった。
「何を考えてたの?お口が休んでるけど」
不二のモノをくわえさせられ、考え事をしていたことを見抜かれた英二。
不二は苛立ったのか英二の頭を鷲掴みにして腰を打ちつけていた。
大きいそれはくわえているのが辛く、英二は口の端から零している。
それが自分の唾液なのか相手のものなのかはわからない。
不二が達したときは全てを飲み込めず、またむせてしまってほとんどシーツに吐いてしまった。
「下手だね。ちゃんと飲んでよ」
「ゲホ…うぐっ…」
「君が悪いんだよ。最初の時点でやめておけばよかったんだ。それなのに君は僕を煽り、さらに怖気づいてるとまで言い放ったんだからね。英二の本気、ちゃんと見せてもらうから」
不二は休む暇さえ与えず、英二の足を抱えて秘所がよく見えるように開いた。
こんな場所を使うことさえ信じられなかった英二は焦るように暴れ始める。
屈辱だ。
英二はまさか初めての行為を同性とすることになろうとは思ってもいなかったし、また相手が自分のよく知る…それどころか親友であった不二にされることになろうとは思わなかったのだ。
いざ、実際に行為をしようという段階に来ると気持ちが落ち着かなくなり、引き返したくなってしまう。
そんな英二の様子を見て不二は見下すような表情で英二を見つめる。
「怖い?」
「…ちがっ…」
「いいよ、無理しなくて。怖いんだろ?俺に犯されるのが」
不二の一人称が変わった。
それだけではない。
表情もまた一段と艶やかでありながら不気味に微笑んでいる。
行為より不二の表情の方が恐ろしかった。
だがもう言葉を発することができるほど英二は余裕がなかった。
指を秘部に差し挿れられて異物感を感じた英二はただ痛いだけだった。
気持ちなど全くよくなくて涙がぼろぼろと出てくる。
さらに指を増やされていくとき、液体のようなものも一緒に入れられた。
滑らかになり痛みは減ったものの相変わらずの異物感は拭えなくて英二は必死に我慢をしていた。
暫くして馴染んだのがわかると今度は不二のモノがそこへ挿入されていくのがわかった。
「うあぁぁぁぁ…!!!!」
「力入れないで…英二…」
「い…痛ぁ…い……っ…」
「大丈夫…だいじょうぶだから…」
汗ばんだ肌がくっつき合ってさらにぱしんぱしんと音がする。
全てがどうでもよくなり不二にしがみ付いて英二はひたすら不二と同じリズムを刻もうと一緒に腰を動かした。
初めは痛みに耐えきれないような気がしたが、不二の言った通りに力を抜くと全ておさまったようだった。
それから一緒に動いていくと官能的な表情を浮かべた不二が英二の視界に入った。
不二の表情は今まで見たことがないほど艶っぽくて、同時に朗らかな顔だった。
