オイシイ所を取られたあげく、グラウンドを走らされてカッコ悪い姿を英二に見 られた。
あぁ…僕はもっと英二にカッコイイとこ見せたいのになぁ。
あ!そういえば英二にまだ伝えていなかった!

僕達が付き合って三ヶ月だってこと!

早く言わなきゃ!!







「ねぇ英二…」

「あっ!不二先輩!危ない!!!」







僕は海堂の声が聞こえたきり、その後の記憶がない。
















































「不二、大丈夫?」







英二が僕の手を摩っていた。
英二…僕を心配してくれてるの?
嬉しい…嬉しいよ!







「英二!」

「はぁ?ちょ…やめて下さい!俺、菊丸先輩じゃないっす!」







ふと我に返る。
なんだ…今のは夢だったのか。
海堂に抱きついちゃった。
あ〜あ。






「今ボールぶつけたのって海堂だよね」

「え…はぁ…すいません…」







僕がタダで許すとでも思うかい?
僕は許さないよ…今から英二を体育館用具室に呼ぶように言った。








「…わかったかい?わかったなら早く呼んでおくんだよ、いいね」

「何をしている」

「げっ…手塚」

「また部長の俺に隠し事か?後輩をコソコソといじめる趣味がお前にあったとは …グラウンド30周だ!」

「待ってよ!いじめてないし!大体さっきより増えて…」

「40周がいいか?」







キーッ!
また僕に走らせるのか!!
いじめてるのはどっちだよ!!







「ありょ?また不二走ってんの?大石」

「手塚に逆らうとああなるからな。英二も気を付けろよ(まぁ英二は手塚のお気 に入りだから走らされることはないだろうけど)」

「ん〜わかったぁ〜」















はぁ…はぁ…もう走りたくない…。
なんで僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだ!
しかもまた英二の前で走らされて!

手塚の意図的なものを感じた。

だけど今日はこの後お楽しみがある。
それはさっき海堂に頼んでおいた約束。

夏休みの用具室なんて誰もいない。
三ヶ月経った記念のお祝いをやるには絶好にふさわしい場所だ。
今部活が終わればあとは僕の思いのまま…







用具室へ一足先に行って僕は英二が来るのを待った。
でもなかなか来ない。

もったいつけちゃって。
英二らしいや。
きっと英二も今日が三ヶ月経った記念日だってことはわかってるはず。
きっと僕を焦らしてるんだな。
握り締めているクラッカーは今か今かと待ちわびてるよ。
早くこの紐を引っ張って〜って言ってる。

ほらほら、英二。
早くー







ガラリと開いた扉。
英二が来た!!!

僕は力いっぱいクラッカーの紐を引っ張った。







「僕達三ヶ月記念日!おめでとう!!!!!…あれ?」

「も、盛り上がってる所すいません…あの…菊丸先輩来れないんで…」







出てきたのは…英二じゃなくて海堂だった。
クラッカーから出てきたカラーリボンやキラキラした紙が海堂の頭に乗る。







「…どういうこと」

「(不二先輩の声色が変わった!)あ…用事があって時間がないって…これ預か ってきましたから…その…失礼します!!!!」







海堂は逃げるように出ていった。
僕がそんなに怖かったのかい…?
そりゃ顔だって声だって変わるさ。
この時を待ちに待っていたのに…。

でも仕方ない、英二の都合だって考えないと。


海堂から渡された手紙は英二からの手紙。
普段はメールで会話していたけど…こうして手紙を受けとるってのは初めてな気 がした。







『不二へ

俺、今日が付き合って三ヶ月目の日だってこと
わかってたけど兄ちゃんが具合よくなくて
食事作ってあげたかったから、
今日行けなくてごめんってことも直接言おうとしたんだけど、
言えなくて、でもメールじゃ味気無いし、
なんかしっくり来ないから手紙なんて
古いやり方にしちゃった。
ごめんね、明日は絶対不二に付き合うから!!

英二より』







なんて…
なんて可愛い文章!

しかもやたら長くて読みにくい所が面白い…!
こんなに嬉しい気持ちは久しぶりだ!
兄想いの優しい弟だよ…英二はいい子だね。







これなら仕方ない。
僕も返事として手紙を書くことにした。