翌日、丁寧に書き上げた手紙は英二へ渡した。
ちょっと照れ臭かったけど英二はすごく喜んでくれた。
「不二から手紙なんて初めてだよ〜!えへへ」
「そう?!よかったよ!喜んでもらえて」
英二が上目使いで僕に抱きついた。
あ〜っ…
だめだ!だめだ!
ここは外だ!
でも…やばい…下半身が大変なことになってる…
でも…
「不二ぃ…?」
「(可愛すぎる…!もう我慢できない!!)」
押し倒してしまおう、と思ったときに何か聞こえた。
今は聞きたくない声だった。
「…朝から何をしている」
「(また手塚か!)なんでもないよ!何しに来たのさ」
「部長としての注意だ。お前は何をしている。挙げ句に菊丸まで巻き込んでサボ
らせるとは」
「あっ違うの違うの!手塚、ごめん…俺ね、ちょっと不二と話したかったの」
口元に人差し指を置く英二。
もう女の子にしか見えない…!
しかも…!
手塚の前で僕をかばってくれた!!!!!!
どうだ!
見たか!
英二は僕が好きなんだ!!!
手塚、君は僕に勝てないよ!
フハハハッ!!!!
「ちょっとだけでいいから…ね?手塚、少しだけ時間ちょうだい…ダメかなぁ?
」
「あぁ、わかった。いいだろう…ただし必ず練習に間に合うように来い」
「えへへ!よかった…手塚、ありがとっ!」
英二のスマイルに手塚は頬を赤らめた。
僕の英二、可愛いでしょ?
でも、あげないよ。
だって僕のなんだから!!
「手塚優しいね!俺の頼み…聞いてくれたし」
「(それは手塚が英二のこと好きだからだよ!)僕には滅茶苦茶厳しいけどねー
。あ、それで…英二、話って?」
僕はドキドキした。
本当なら英二をこっそり用具室に連れていって…と思ったんだけど。
英二からの話ってまさか…
「俺の家に来ない?」
とか言ってくれるかも?!
いやいや、違う!
きっと…
「不二の家…行きたいなぁ?」
とか〜?!
どうしよう///
恥ずかしいよ、英二〜!!
僕だって君を抱きたいけど…今すぐなんて…あ…じゃあ…///
「もーしもし?不二?聞いてんの?」
「ハッ!…あ、ごめんね!ちょっとボーっとして…」
「あのね!俺の大好きなチョコレーツ、知ってるでしょ?アイドルユニットの。
なぁんと!ライブチケット二枚取れたの〜!!」
「え?チョコレーツのライブチケット?」
予想とは全く違ったもので、英二は僕と一緒にチョコレーツのライブに行きたい
らしい…
そっか…そういうことか。
いや、別に僕は嫌なわけじゃないんだよ?
うん、わかってる。
でも…できれば二人っきりになりたかったなぁ。
「行こうね!」
「うん(英二が好きなチョコレーツなんだし、いいや)」
「お〜い!英二ー!!!」
今の聞こえなかったフリしていいかな。
ね、いいよね。
また僕の知ってる奴が来るんだけど。
せっかく英二と二人っきりなのにさ。
ね、ひどいよね?
なんで来るの。
来るなぁぁぁぁぁ!!!!!!
「おっはよ〜ん、大石!」
「英二!喜べ!!お前の好きなチョコレーツのライブチケットが手に入ったぞ!
!!」
「え」
信じられない…僕は英二から受け取っていたチケットをひらりと落とした。
そんな…そんなぁ…
「そうなの?すごいじゃん大石♪あ、でもね〜…実は俺も当てたんだよね〜」
「そうか…じゃあ俺と一緒に二人で…!」
「僕もあるんだ」
フッ…大石、残念だけど英二と二人きりなんて僕が絶対に、絶対に、絶対に…
許さない!!!
「な…不二、いたのか」
「(最初からいたよ!見えてたくせに!)いたけど…僕達、二人で見に行く約束
し…」
「じゃあさ、三人で行こうよ!ね!」
な、なんでぇぇぇ〜!!!?
どうしてそうなるのさ?!
英二は僕と二人きりが嫌なの?
僕は…二人きりになりたくて仕方ないのに…。
「不二ぃ…ダメ?」
「ダメじゃないよ、英二。そうだね、行こうか」
僕はいいことを思いついた。
大石、君には英二をやらないんだから!
覚悟するんだね…フフッ…
