部活の練習後に飲む薬=サプリメント
とでも解釈したのだろうか、英二は僕が薬についてまだ一言も話していないのに
、一気に飲んでしまった。
効き目が出るのはいつだろう。
怖かった。
「うぐぅ!!!」
「英二!!!!??」
何が起きてる?
わからないよ!
やっぱりこんなもの受けとるんじゃなかった!
後悔先に立たず…
英二は苦しみ悶えた。
だが英二の様子はおかしかった。
僕の想像していたものと違った。
顔を上げた英二の目は座っていて僕を酷く睨みつけた。
とても恐ろしかった。
英二じゃないみたいだった。
「えい…じ?」
「…ライ」
「え?」
「キライキライ!!不二なんて大嫌い!!!」
「うそ…?!」
ただ唖然とするしかなかった。
僕に抱きついてくるとばかり思っていたのに。
“キライ”の言葉がリフレインして僕は空気の抜けた風船のように気が抜け、地
面に倒れた。
信じられない…こんなことになるなんて。
英二は僕の側を離れ、大石達の所へ行ってしまった。
「(嘘だ…)」
しばらく動けなかった。
僕は英二から嫌われたら生きてなんかいけない。
どうしてこうなったのか、幸村に聞いてみるしかない。
だけど僕は幸村と連絡をとれない。
電話番号もメアドもわからないからだ。
こんなことになったのもあの変な薬のせいだ。
責任をとってもらわないと!
「英二、どうして不二と今日帰らないんだ?何か嫌なことでもされたのか?」
「…心変わり!不二なんてイヤ〜!!」
「じゃあ…俺と付き合おう、英二。お前の嫌がることは…しないよ?」
「菊丸、大石よりもふさわしい人物がいる。それは俺だ」
「図々しいっすね、部長。菊丸先輩、こんな堅物より俺と楽しいことしようよ」
「越前、お前は無礼だな」
僕の知らない所では英二の取り合いが行われている。
このままじゃ本当に僕…
「薬、試した?」
「幸村?!…よくもあんな薬を使えなんて言うよ」
「フフッ、本当に使うと思わなかったよ…まぁ安心して。あの薬効き目がなくな
れば元に戻るから」
「そ、そうなの?じゃあ早く英二の所に行って皆から守らなきゃ…」
この場を離れようとした。
だけど幸村が僕の腕を離してくれない。
早く離して。
「俺は単なる悪戯で薬を渡したわけじゃないよ」
「な…何を…」
「今菊丸がいない間に君と遊ぼうかと思って、注射針を刺してみただけ。自由に
動かれると困るからね」
僕は腕を捕まれていた間に何かを注入されたようだ…
駄目…意識が朦朧とする…
英二のトコ…行かなきゃなのに…
「余裕のあった奴が余裕なくなるのを見るの…面白いな。しばらく遊べそうだよ
」
「やめ…」
「何も抵抗できなくなったね…そりゃあ天才でもこの薬には勝てない。諦めなよ
」
英二…
「ハッ!俺、こんなとこで何してるんだろう!不二は?!」
「え?英二、さっき不二はもう嫌いだとか言って…」
「違う違う!嫌いなんかじゃない!えっなんで俺不二と一緒じゃないの?やだや
だ!不二のトコ行く!!」
僕は微かに意識が残っていた。
幸村が僕に何をしているのかあんまり考えたくなかった。
自分の肌が露出されてる。
遊びでこんなこと…したくない!
まだ僕は英二と一度もしていないのに!
「不二、おまたへ!」
聞こえたのは空耳だろうか、いや違う。
間違いなく今のは英二の声!
僕の姿を見るなり、体が硬直していた。
英二はショックを受けていたみたいだ。
「神の子が…こんなことしていいと…思ってんの?!許せない!!」
「菊丸…なぁんだ、もう帰ってきたの。早いなぁ、まだ俺は不二と遊んでた途中
なのに」
幸村はやれやれ、と言いながら去っていった。
英二が…僕を助けてくれた。
