不二が会社に来なくなってから一週間が経った。
もちろん謝るためにメールしてから家に行ったりしたけど受け入れてくれなかっ た。

自分が嫌になって俺も会社に行かなくなった。


後から上司の電話が来て、二人とも解雇だと言われた。
問題を起こされる前にお前を受け入れなければよかった、と言われた。
言われても仕方のないことだ。

俺だってどうしたらいいかわからない。










その後…
パトカーがサイレンを鳴らして騒ぎ始めたので何だろうと見ると、誰かが逮捕さ れていた。
いかにも危なそうな、怖そうな男だった。
容疑はひき逃げらしい。
ひき逃げってまさか…俺は思わずハッとした。
彼女を殺した…あのひき逃げの犯人なのだろうか。
気になっていても立ってもいられない俺は警察と話した。


男の所有していた車のタイヤに彼女の血液が付着していたらしい。
もう…犯人はこいつしかいないじゃんか!

怒りが抑えられず、男に殴りかかろうとしたけれど警察に止められた。
周りの住人は男が俺の恋人を殺した犯人だと知れ渡っていたようで、気の毒そう に俺を見ていた。









その後の調べで男は俺にストーキングをしていたこともわかり、再逮捕されるこ とになった。
ドアノブの件はこいつだったみたいだけど、俺に好意があってしたわけではない と言う。

意味がわからなかった。
じゃあなんでストーキングなんてしたんだろう。
話によると───







ネットで闇サイトを運営していた男はある依頼が入ったという。
依頼人には好きな人がいて、好きな人には既に恋人がいた。
このままでは完全に恋人に取られてしまうと思い、上手く別れるように説得して もらいたいと頼んだようだ。

だが見知らぬ人に説得なんて無理だと男が断っても、依頼人はなかなか引き下が ってくれなかったらしい。
そこで男が考え付いたのは車で乱入し、旅行を邪魔するという計画だった。

男一人でやるよりは二人でやった方が成功率が上がる、と言って依頼人も呼んだ のだという。
だけど彼女が死んでしまったことに責任を取りたくなかった依頼人は逃げた。
そんな無責任な依頼人ならば、その依頼人の大事な奴にも手を出そうとしてドア ノブの嫌がらせをしたらしい。
その依頼人って…















「まじ…か…よ…」









俺は意識を失って気絶した。
まさか、まさか…その依頼人が…不二だったなんて…!!















目を覚ますと病院のベッドだった。
さっき聞いたことを思い出したら吐き気を催した。
具合が悪い。
今でも体の震えが止まらなかった。

夢に出てきた彼女の言う通りだった。

不二は彼女と俺を引き裂くために闇サイトまで利用して別れさせたかったんだ。

不二が俺を好きだなんて…信じられない。
最初の方は不二がストーキングしていたこともわかり、ついに不二も逮捕される ことになった。







「英二…」

「信じられないよ…不二!ねぇ!!嘘でしょ?!どうしてこうなったの?!俺わ けわかんないよ!!」

「僕はもう…まともな人間にはなれない。さようなら」

「待ってよ!嘘だ!だってだって!あんなに優しかったのに…俺のこと好きなら どうして率直に言ってくれなかったの?!!!」

「ダメなんだ…もう…もう………ダメなんだ」







警察に連れて行かれた不二。
俺の精神状態は崩壊してしまった。















通院し、薬をもらったが一向によくならなかった。
それどころか壁に頭をぶつけたり、奇声を発したりして…もはや自分がおかしい ことも気付けずにいる。
もう…ツライ。
人間…やめたい…















男の方が重罪であったため不二は罪がそこまで重くはならなかったけど、出所す るまではだいぶ期間がある。
俺はその間どうしたらいいんだろう…