生きることが、人と会うことが、呼吸することがこんなにも苦痛だなんて…今ま
ではこんな思いしたことなかった。
ただツライだけ。
だってどうしたらいいのかわからないんだもん。
不二を憎むべきなのに完全に憎めないでいる自分がいて。
どうしたらいいんだろう…彼女殺しに関わってたなんて嘘であってほしかったの
に。
なんで…殺さなくても俺に告白できただろうに。
考えたら頭が痛くなった。
蛍光灯も眩しかったので布団を頭までかける。
いや…いやだ…
嫌!!!
カウンセリングの人が来て、俺の心情を理解するべくいろんな質問をしてきた。
もちろんちゃんと答えてるけど…もうなんだかどうでもいいや。
症状は以前に比べて軽くなったらしいので一時的に退院することになった。
正直、家になんて帰りたくはなかった。
なんだかつらいだけ。
結局俺は恋人を失って、友達も失って…
家に帰って何をするの。
もう…本当にどうしたらいいかなんてわかんないよ。
会社も解雇されちゃうし。
病院を出て、家へ帰ると郵便受けにはたくさんの手紙が入っていた。
皆刑務所から送られてきたもので、誰からというのは…。
「不二…」
手紙はたくさんあったけれど中身はシンプルだった。
言い訳みたいなことが書いてあるんだろうなんて思ったけどそんなことは書いてなくて
…俺への気持ちがただひたすらに書いてあった。
俺が彼女と付き合う前から不二は俺のことが好きだったんだ。
俺は不二の気持ちに気付いてやることができなかった。
俺を好きでいながら…彼女と上手くいくようにって心の中では思うようにしていたけど、
実際は胸が引き裂かれるほどの痛みがあったんだってことが書いてあった。
俺は…不二の気持ちなんて知らないで…知らない間に不二を傷つけていたんだ。
そう思ったらなんだか涙が出てきた。
俺は知らなかったじゃすまなかったんだ。
どうして…どうして不二の気持ちに気付いてやれなかったんだろう。
もしかしたらこんな犯罪を犯さなくてもよかったかもしれないのに。
痛い…心が痛くなってきた…。
それからというもの、俺は面会はしなかったけど不二に手紙を書き続けた。
もちろん俺は不二を許したわけじゃない。
悪いことだって知ってたんだし、いくら人に騙されてたといっても罪は重い。
それでも俺が不二に手紙を書き続けたのは、自分の罪を軽くするためなのかもしれない。
俺がもっと早く気付けばよかったんだから。
その罪滅ぼしのために俺は毎日不二に手紙を書いている。
きっと苦しいのはお互い様なんだ。
もう少しすれば不二も刑務所から出られるはずだ。
もう…俺は泣かない。
不二をちゃんと出迎えるんだ。
出迎えて…もう一度やり直す。
俺達の友情は簡単に壊れるもんじゃない。
不二の気持ちに応えるってのはできるかどうかわからない。
それでもこんなこじれた状態のまま暮らしたくはないんだ。
俺は手紙を届けてもらうと倒れるようにベッドへ行って、横になった。
