会社帰り、これからは不二と帰ることになった。
不二は一応短期間のみ俺の家に住んでくれるらしいけど、あんまり酷い状態なら ずっと住んでくれるらしい。
酷い状態…そんな事になったら警察呼ばなきゃだけどね。







「歩いてても視線とか感じたんでしょ?今はどう?」

「ん〜…ないなぁ。不二がいるからかもしんない」







相手がどんな奴かわかんないからなおさら怖い。
でも今は不二がいる。
きっと…大丈夫。

家に帰るとすぐさま電話がかかってきていたのに今日は何もない。
やっぱり俺が一人じゃないから…。







「英二?脅える必要なんてないよ、僕がいるんだから」

「うん…ありがとう」







心強い。
やっぱ不二に来てもらってよかった。

あ!でもこれからの食事は二人分用意しなきゃいけないんだ…どうしよう。
材料足りないかも…それでもなんとか二人分は作らなきゃ。








「近くのコンビニ?なんで行く必要があんの」

「英二に負担させるわけにはいかないからね。材料足りないでしょ?」

「大丈夫だよ!心配ご無用!お願い…俺を一人にしないで」







不二は俺を抱き締めてくれた。
まるで恋人のような扱いだったから驚いたけど…これが不二の優しさなんだ。
すごく嬉しい…。









「ごめんね…君の事を考えていなかったよ。僕は君の側にいる」







夕飯は俺の家で食事。
半分こ。
不二は食が細いからあんまり食べなかった。
食べるというより“見る”。
不二は俺が食べてる所をただじっと見ている。

あんまり見られてると恥ずかしいんだけど…。








「美味しそうに食べるよね、英二って。ソーセージ頬張ってるとことか…可愛い ね」

「そう?そんなこと初めて言われたよ」

「…もっとたくさん頬張ればいいのに」

「え?やだよ〜口の周りが油でテラテラしちゃうじゃん」

「…テラテラ、ね」









意味深な表情を浮かべ不二は口をティッシュで拭った。
ご馳走様と言うと俺の分まで食器を洗ってくれると言う。
その間に風呂に入れってさ。
要領がいいな〜、不二は。
ここはお言葉に甘えて風呂に入った。







「悪くないな〜男同士の共同生活も。あとで不二に相談してみよーっと!」







俺は全裸になり浴室に入る。
窓から誰かが覗いているかも、なんて考えてた時もあるけど今は安心…。







「(ん?なんか視線感じる…まさか…)」







窓を見たけど誰もいなかった。
でもなんか誰かに見られた感じ…気のせいだといいけど。

気持ち悪かったので早く風呂から上がった。
不二には早すぎって言われたけど長湯したくなかったんだもん。
風呂は不二にバトンタッチした。







就寝前に一杯やろう、ってことで冷蔵庫から缶ビールを2本出した。
乾杯をする。








「そういえば英二って好きな人いるの?」

「好きな人?いないよ〜。あ、でもね…よく給湯室でしゃべる女の子いるよ。け っこう可愛いんだ」

「…ふぅん、そう」









そっけない不二の返事。
つまんない話だったかな…。








「その子のことは好きじゃないの?」

「うん、俺彼女作る気ないんだよね」

「英二がその子に興味示してくれないからストーカーになった…なんてことない よね?」









俺は缶をぐしゃりと握り潰した。







「なんてこと言うんだよ!あの子は静かでいい子なんだぞ!不二謝れよ!」

「ムキにならなくてもいいじゃない。…僕はもう寝る 。君を傷つけたなら謝るよ、ごめん」







不二はソファで眠った。
なんだよ…不二…変なの。
俺が女の子好きだと嫌なわけ?
普通じゃん。









後味の悪いまま布団に体を埋めた。