朝。
なんだか体がだるかった。
すごく腰が痛い。
首にも痛みを感じる。
パジャマもはだけてしまっていて何が起きたのかわからなかった。
とりあえず鏡を見るために洗面所へ向かう。
やっぱり首には痣があった。
なにこれ…
「おはよう」
不二の声に驚いた。
そうだった…昨日から不二と一緒にいたんだ。
「ねぇ不二…俺の首に痣があるの…こんなの昨日はなかったのに」
「へぇ…もしかして虫に刺されたのかもよ、触ってみればわかるかも」
「痛っ…!」
痛みがさらに増した。
不二は触ってごめんと言う。
「薬でも塗っておきなよ…きっとよくなるよ」
「うん…」
体内にも何か異常がある気がした。
お尻と…中の方が気持ち悪い…お腹も痛いかもしんない。
俺はトイレに行った。
酷い下痢になった。
「ちょっと…大丈夫なの?会社休む?」
「…平気」
なんで?
俺の体…なんかヘン…。
「菊丸さん、具合悪そうですね…大丈夫ですか?」
給湯室に行くとあの女の子がいた。
俺より一つ下で髪が長く、ゴムで結っている。
清楚なイメージの女の子。
こんな子がストーカーなんてするはずがない。
「大丈夫だよ!ちょっと飲み過ぎたのかもっ」
「そうですか?じゃあ今度は私も飲みたいな…一緒に飲みに行きません?」
「いいね!行こ行こ!」
今日は体調がよくないので明日の晩に行くことにした。
女の子に手を振って別れると不二が真後ろに立っていた。
「わ!び、びっくりした…声ぐらい掛けてよ」
「英二…飲みに行ったら襲われるかもしれないよ」
「ううん、不二に迎えに来て〜なんて都合のいい事言わないよ。大丈夫、一人で
帰ってくるから」
「違う。僕が言いたいのはあの女が危険だってこと」
俺は血管がぶちギレそうになった。
どうして不二はあの子にきついの?
いい子なのに!
「またストーカー説?いい加減にしてよ。俺の人間関係そんなに壊したいわけ?
」
「君を心配してるんだよ」
むかつく。
不二って人のこと疑ってばっか。
もう話もしたくなかったから無視して仕事に戻る。
翌日。
全く会話をしないまま今日を迎えた。
不二が来てくれたのが最初はあんなに嬉しかったのに今は…嬉しくない。
どっか行っちゃえって思う。
「お待たせ〜!どこ飲みに行こうか?」
「えっと…菊丸さんの好きな店でいいですよ」
「ん、じゃあね…居酒屋特集されてた店行ってみる?女の子に人気らしいよ!」
雑誌や口コミで聞きかじっただけなんだけど、可愛らしい店で俺も興味があった
んだよね。
「あ…いい雰囲気ですね。菊丸さん、ありがとう」
「えへへ〜どういたしまして」
美味しいつまみとお酒でほろ酔い気分になった俺は女の子の方を見た。
女の子はもじもじしていて何か言いたそうな表情だった。
どうしたのかな?
「菊丸さん…なんだか今…いい気持ちなんです。実はお話があるんです…いいで
すか?」
俺は頷いた。
すると女の子は俺のことが好きだと言った。
もちろん見た目だけじゃなくて、仕事で失敗しても慰めてくれたりしたから…だ
って。
そっか…俺を思ってくれてたんだね…。
「いいよ…俺と…付き合おうよ」
「本当?…嬉しい、ありがとう菊丸さん」
「あ!今度から俺のこと名前で呼んでよ。俺も名前で呼ぶからさ」
「は…はい///」
俺は女の子と付き合うことに。
話をしていると誰かにまた見られている気がした。
気のせいだ。
たぶんおんなじ奴だと思う…でも女の子はここにいるし、不二が言ってたストーカ
ー説は見事にはずれたじゃんか。
謝って欲しい。
本当に。
「ただいま〜…って不二はもう寝ちゃったか」
静まった部屋にソファで寝ていた不二。
確かに俺はボディーガードを不二に頼んでいながら布団にも寝かせてあげないの
は最低だと思った。
今度は逆に俺がソファで寝よう。
ベッドは不二に譲らなきゃ可哀想だし。
ごめんね…不二。
