翌朝、二日酔いで気持ち悪かった。
そんな俺には目もくれず、不二はさっさと出勤してしまった。
このまま仲悪い状態でいたくなかったから俺は走って不二の前まで行く。
「不二!この間はごめん…俺言い過ぎだった」
「…いいよ。僕も彼女に失礼なこと言っちゃったしね。…ところで彼女と付き合
うんだね、おめでとう」
あれ?
なんで知ってるんだろ…言った覚えないのに。
「昨日酔った状態で僕に報告したんだよ。嫌だなぁ…もう忘れちゃったんだ」
「え?言ったっけ?全然覚えてないや」
酔った勢いで言っちゃったのか…でも俺、昨日は記憶がなくなるまで飲んでない
んだけどな。
不二に言ったかなぁ…まぁ知ってるんだから言ったんだろうな。
「よかったじゃない。今度デートに誘いなよ」
「うん、するするー」
こうして不二とは仲直りすることができた。
よかった。
仕事を順調にこなしていると早速彼女からメールがきて来週末に水族館に行かな
いかとお誘いがきた。
もちろん行くことにした。
「へぇ水族館か。いいんじゃない?最近暑いし涼めそうだね」
「えへへ〜いいでしょ!ま、俺的には遊園地の方がよかったけどねー」
と話をしていた。
俺が感じていた怪しい視線ももうなくなったみたいだし、やっと落ち着くことが
できそう。
「ねぇ不二、今週はありがとね。おかげで怪しい奴もいなくなったみたいだし…
ボディーガードは今日でおしまいね!」
不二には負担かけてると思ったからてっきり喜んでくれると思った。
でも…俺がそう言った瞬間、不二の顔が曇り始めた。
「いらなくなったらポイ捨てなんだ…」
「え?今なんて言った?ごめん、聞こえなくて」
「…なんでもないよ。そう、わかった…じゃあ明日から自分の家に戻るね」
どうしてそんな顔するんだろう…。
不二はずっと寂しそうな顔のままだった。
翌日。
朝、目が覚めて誰もいない部屋を見渡す。
静かで何の音もしないから寂しくなった。
会社に行くと俺が社内恋愛をしていることがバレたらしく、すれ違う人みんなに
言われた。
彼女はなんだか知らないうちにバレていて、なんで皆が知ってるのかはわからな
いと言った。
誰かに見られてたのかな…あ〜あ、暫く言われるなぁ。
「大変だね、英二」
「大変も何も誰かに必ずからかわれるんだもん、ホント誰が広めたのかなぁ」
「…僕だよ」
一瞬、時が止まった。
なんで…バラすのさ。
「やましいことしてるわけじゃないんだし、別にいいじゃない。もし付き合って
ること知らなかったら彼女を誰かに取られちゃうかもよ?」
そうかもしんないけど…でも指見ればリングしてるし想い人がいるくらい察しで
きると思うんだけど。
「それか…そのリング最初から外しておけばよかったのに。隠すなら完璧にやら
なきゃダメだよ」
正論かもしれない。
でも皆に言うんだったら俺に一言言って欲しかったな。
からかわれるなんてまだいい。
そんなことより俺はまた前と同じ恐怖を感じた。
やっぱりボディーガードは続けてもらうべきだった。
不二がいないからまた奴は俺についてくる。
だんだん歩くスピードも速くなってきた。
やだよ…追いつかれる…!
まだ家には着かない。
工事現場のフェンス近くを通った瞬間、追い掛けてきた奴は俺を突き飛ばした。
「(殺される!!)」
逃げなきゃと思ってるのに体が動いてくれない。
どうしよう…ダメ…俺…
